前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

エベンキとオロス

日曜昼過ぎからポレポレ東中野へ、中国インディペンデント映画祭2009から、ドキュメンタリー2本を観る。
オルグヤ、オルグヤ・・・』2007年 顧桃 監督 


中国東北部の大興安領でトナカイ放牧と猟に暮していたエベンキ族の定住化政策に、慣れず山に戻る集団を数年にわたって継続取材している。主な被写体の中年の姉弟は年中アル中状態で山に戻っても働かないので仲間にも嫌われている。
冒頭の客車の場面で漢人女性との会話は、少数民族へのナチュラルな偏見と政府の『優遇』政策へのやっかみが窺える。これまでの祖先から続く暮らしを禁じられ、猟も猟銃を取り上げられた境遇も、ここまで酷いアル中だと余計に理解されそうにない。これは近代国家の先住民政策に多くみられる。19−20世紀に出現した近代国家が、国境線付近の少数民族の生活環境を破壊し、疲弊させた事を知る今現在の記録。

=====================


トナカイ エベンキ族を内モンゴル根河郊外の新築住宅地に定住させる2003年の政府政策。政府の定住化政策は60年代も行なっていた事を知る。満洲関連本では日本の特務機関がロシア国境工作に彼らツングース系の少数民族を利用していた記述が散見される。


トナカイに乗った狩人たち―北方ツングース民族誌 (1981年) (刀水歴史全書〈7〉)
ソ連時代の69年に出版された旧ソ連領シベリア広域のエベンギ族研究フィールドワークの翻訳本。(地図から上記の映画オルグヤ〜はエベンギ族の広範囲な生活圏の南端と知る)
トナカイと共に厳しい自然環境で生きる遊牧生活の科学的な紹介、母系社会と冠婚葬祭。エベンギ族と動物と自然界との細かなしきたり、尊敬する『熊』を猟で殺した罪をカラスの真似で誤魔化す風習も興味深い。今では貴重な民俗の記録になっていると思われる、良質な科学読本。



『俺たち中国人』2007年 沈少民 監督


ロシア対岸の黒龍江省宏疆村はロシア村と呼ばれる。第一次大戦で国境を越えて来たロシア人たちの末裔が260人近く集団で住んでいる。中ソ関係が悪化した時期はスパイ村とも呼ばれ、文革期にも出身から辛い目にあっている。
ロシア語は話せない、ソ連国歌をおどけた中国語替え歌で唄う。中ソが蜜月だった頃に流行ったのだろうか『モスクワ郊外の夕べ』も北京語歌詞で。
外見で鼻が大きいのが中国人社会では目立ってしまう、鼻穴に硬貨が入るくらいと実演して嘆く彼ら。結婚相手が居ないと悩む若い男。ラストの声だけの証言は〜〜〜


=======================


中国領に住むロシア人の子孫たちはオロス族として少数民族扱いになっている。ロシア正教宗教改革で弾圧から逃れた旧教徒や、革命から逃れた白系ロシア人など時期と理由はさまざま。ロシア正教も当然各派あり、現在どこまで容認されているのかなと。この映像では、教会の説教の場面があるけど・・・、道教・仏教混在の信徒も映されている。