ヤクとホーミーと私
「トゥワー民族」鴨川和子著 晩聲社90年刊
を読む。80年代のソ連で民族学を学び研究機関からトゥワー自治共和国(現トゥバ共和国)へ84年夏(日中40℃)と冬(マイナス45℃)に訪れているフィールドワークルポ。
著者は研究者の身分でも、この当時は外国からの訪問者を受け入れるのは極めて稀だったようで、各地で貴賓扱いを受けてしまい、研究採取も写真も苦心した模様が伝わる。ソ連時代の末期でもここは辺境だけに当時の機関や単位・用語も多い。
中央アジア・世界のへそ。南シベリアという言い方も不思議な感じ。モンゴルの上に横長に位置している。北はトナカイの放牧が多く、ヒツジ、一部でヤクが家畜としているのも驚き。ここではヤクの寿命が30年近いそう。チベットから伝わるものがヤクとチベット仏教。1931年当時の国勢調査では787人のラマ僧と752人の民族系?シャーマンが居たという。
北海道のアイヌ〜シベリアの各民族に共通する熊送りの儀式に、短い口承訳で記述がある。現地語の「熊」は直接呼ばずに遠まわしに名前を表現するのも面白い。畏敬と狩りの対象だからかな。夫婦でハンターという方の紹介もある。
80年代中頃ここに記録された文を読むと、シキタリ・掟も多い。その一方で首都で暮す女性の「進歩的」変貌も記している。風貌はモンゴルや日本人と変わらないトゥバ女性のロシア名に「スベトラーナ」が多いのは苦笑する。スターリンの愛娘の名前は魔除けなのかなとも。
日ソ合作の黒沢映画「デルス・ウザーラ」で主役を演じたムンズーク氏へのインタビューもあり。物語の主役とは民族は違うけど、シベリアで育った事に変わりはないエピソードをいくつか。極寒のタイガの屋外で眠る方法とか、絶対真似できないけど。
書籍に「トゥワー」と表記されていると、この地域に関心があるひとでも見逃す恐れも。カタカナ表記の統一はどこでも問題だけど・・・歌唱法のホーミーとホーメイなども。
そういえば、持ってたCDをっ。今は無き六本木のWAVEで買った。
Tuva / Voices From the Center of Asia
- アーティスト: Tuva
- 出版社/メーカー: Smithsonian Folkways
- 発売日: 1992/07/13
- メディア: CD
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