前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

ニッポン人にダメ出し

秋の長雨続く、図書館で前から気になっていた本を借りて読む。
樺太の先住民ウィルタに光を当てた田中了氏の著作。
日本とロシアが樺太を奪い合う時から、樺太アイヌウィルタ・ニブヒなどの先住民は国境で分断されて強烈な「皇民化」と国境の楯という運命をたどる。敗戦後はソ連へ9年強も抑留されたりと、現実は文字面だけでは伝わらないほど重苦しいけど、源太郎ことウィルタのゲンターヌの性格と酒好きな著者の紀行文で、痛みも悲しみも少しだけ柔らかく伝わる。


■『母と子でみる戦争と北方少数民族 (母と子でみるシリーズ) あるウィルタの生涯』94年刊
母と子でみる〜子供向けというよりも反戦オトナ向けな文章。


■『サハリン北緯50度線―続・ゲンダーヌ』93年刊
まだ読んでない79年刊「ゲンダーヌ ある北方少数民族のドラマ」の続編。ゲンダーヌが亡くなってからの後日談とサハリン慰問が内容の中心。


憲兵隊から徴用を受け偵察中にソ連兵に狙撃された仲間が戦死扱いにならず、報告は「土人の病死」とされる、奴は死ぬ前に「天皇陛下万歳」を言わないから戦死にならないのだ、と真面目に語り合ううち、それは誰もが無茶な事に気づいて笑いが出る。それを上官に叱られる話とか。う〜


元々狩猟と漁猟で移動する暮らしのウィルタとニブヒを、国の政策で社を中心にしたオタス村(旧名は敷香の近く現ポロナイスク)に定住化させるところから、彼らの人生は始まっている。ゲンダーヌの養父ゴルゴロ翁はウィルタのシャーマンでもある。ゴルゴロ翁からの聞き書きを読むと皮肉と笑いの表現で目眩もする。

(サハリン北緯50度線 P129〜)
もともと人間が住めるところではないのだ。ゴルゴロ翁にいわせると、オタス村は大きなクレ(トナカイを飼う牧柵)だ。ドジンをクレに放り込んで見世物にする。シシャ(日本人)が珍しがって見にくる。クレの中に、小さなクレ(学校・飼育場)をつくって、センセ(調教師)がムチをもってシシャのマネをさせる。上手にマネをする子をたくさんつくる。ウィルタのゲンダーヌは「源太郎」になった。ニブヒのイガライヌは「一郎」になった。