前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

なぜにダマスの寓話

BS世界のドキュメンタリー『シリア カゴの鳥ではおわらない』シリア2007年Proaction Film 制作
面白かったので感想を。


シリアの首都ダマスカス在住、育児のために退職した女性の意欲的な再就職活動を、家族が暮している内側から写す。それにシリア発イスラム圏で大人気の着せ替え人形FullaフッラのテレビCMと、メーカーの広報担当者へのインタビューが細かく挟まれる構成。


アムステルダム国際映画祭2007での紹介動画●


二児の母親はモデルのような女性、メディア業界で仕事がデキる自負心が漲る、それがイライラの元にもなっている感じ。周囲からは家にいつも居る信仰厚い良妻賢母を求められているので。
着せ替え人形フッラはバービーと違い宗教的配慮がされていると広報担当の男性の説明。胸の起伏が目立たない、服を脱がせても全裸にはならない髪を隠しているなど。日本のリカちゃんシリーズ同様に別売りのお祈りグッズから、フッラブランドのガム、ファンシー家具、とキャラクターグッズ展開されている。テレビCMは育児中のリビングにも流れている。
広報の男性の自身に満ちたフッラのコンセプト説明は可愛そうにぶつ切りにされて、就職活動を周囲に理解されず憔悴する女性へまるで意地悪なコメンテーター役のように使われる。
女性は未だ外社会では自分の意思を持つ事を許されない人形、という因習を自嘲するようなドライな終わり方に見えた。取材された側と女性監督との共通認識と信頼関係のなせる技か。


無断リンク(HP えくたんのページ 着せ替え人形fullaと服の下の詳しい画像あり●)


面白いけど何か落ちつかない。放送は実質48分でオリジナルは52分のテレビバージョンと75分版がある模様。長い方を視てみたい。