前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

カルカッタ大全

カルカッタ大全
ISBN:4409140329
安引宏・今井爾郎・大工原彌太郎(共著)
人文書院よりこの日に初版が出された。


自分より前の旅人は、藤原新也著「インド漂流」に影響を受けた人が多いと思う。
この「カルカッタ大全」と、「ゴーゴーインド」蔵前氏のバックパッカーエッセイが、
自分のインド行きを後押しした。未だ魔力の強い本です。

この本は3つの章に分かれている。

第一部。西洋文明の裏側を読む。


初めての観光客を茶化すような、街の案内と下段の歴史的考察が平行している。
「ここであなたは〜する。」といったカルカッタRPGシナリオは進む。
旅の参考にと軽く読んでいるうちに、これは秀逸な都市研究本だと気がつく。


第二部。内部の声は語る


大胆な口語訳で、あらゆる社会の階層13人のインタビュー文と、
故インンディラ・ガンジー元首相の日常会話集。
火葬場の男、教育保健婦マザーテレサ秘書、人力車引き、女性記者、
中学教師、医師、元税関長・・・
「死体を買い血を集める国の人々へ」と題された火葬場のベテランが
語る話に絶句。砂糖が食えなくなるかも?
教育保健婦の日本人への反論には完敗する。
マザーテレサ秘書の高慢な描写は、たとえ作為的だったとしても
「死を待つ人の家」が現地でどう思われているのかを教えてくれる。
相手の宗教観を無視して「救済」する行為を賛美してよいものか?


第三部。東洋文明の裏側を考える
カルカッタで暮らし始めた「あなた」の寺院巡り、
博物館・・・日常生活。そして帰国。
ヒンドゥー教の重層な世界観と理解の地平へ?
わからなくてもよい・・・という甘えに落ち着く。(泣)

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自分の記憶の光景が迫ってくる。

大通りで頭を地面に突っ込んでいたサドゥ(行者)
フルーツと香辛料と生ゴミの匂いが襲う市場。
大衆食堂でのコップの水滴。
道路の黒い排気ガスと騒音。
地べたで売ってるエロ雑誌・・・


カルカッタは元々、隣のバングラデッシュと同じ文化圏に位置する。
ベンガル語を、ヒンディー語を、英語を使う。
ベンガル語は発音が日本語に似ている。
彼らの英語はおのずと日本人の「カタカナ英語」そっくりになる。
バックパッカーに有名だった絵葉書売りの「サトシ」に教わったベンガル語
「今日はとても暑いね!」→あじけおねくごろむあちぇ!
(あーじかる・おねく・がらむ・あちぇす)


インドで麻薬や宗教的体験は期待していなかった(疑り深い性格なので)。
潔癖症が蔓延する日本から逃げ出すという、動物としての本能はあった。


うっとうしい程の活気と穢土が混濁した都市カルカッタへ。
すべてをなぎ倒すスコールの後にたちあがる蒸気と匂い。
・・・・・・・粘菌の様な変幻自在さ。