前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

「沖縄うりずんの雨」上映会とトーク

『沖縄うりずんの雨(戦後70年、沖縄は問いかける)』公式サイト
武蔵大学の学園祭を通って上映会へ。かなり広い会場に120人越えの聴衆。映画パンフレットまでいただく。
上映後に大学の近所に住んでいるというジャン・ユンカーマン監督と上映会主催者の永田浩三先生が質問者になってのトーク

沖縄の歴史を包括的に紹介しながら、基地が出来てからの数々の事件や現状を伝える映画は、あまり伝えられてこなかった元・現役の米海兵隊からの目線も含めて新鮮だった。基地反対派のフェンスアート(カラーテープで文字を貼る)が汚いからとちぎって「掃除」する日米の若者が「オスプレイファンクラブ」と知る。軍属らしい女性に質問すると「基地は米国の為にある」とアッサリ本音を語ってくれて、政府高官にインタビューを粘って取材リクエストしてたのを「あ、もういいや」と取りやめたと監督の話。沖縄生まれで米兵相手の歓楽街で働き、個人的にも米兵とつきあっていた女性が「米兵は好き・米軍はきらい」と、ホンネとタテマエを使い分ける本土の日本人よりも、明日死地に行くかもしれない米兵の方が素直に個人同士では分かり合える、そんな感情も腑に落ちる気がした。
ドキュメンタリーの内容のおおよそは、抗えないまま米軍の前線基地として翻弄されている沖縄の現状を紹介している。ただ監督はこれまで沖縄に来た米兵の数だけ、彼らにもオキナワに特別な思いがあるだろうと。

「河 Gtsngbo」

東京国際映画祭 出品作 六本木ヒルズのTOHOシネマズで鑑賞。
何本目かのチベット語映画は「オールドドッグ」の撮影・美術担当もしたソンタルジャ監督2015年作「河」
主役の小さな女の子を中心に親子関係に何か問題を抱えた三世代の物語。放牧の暮らしも順調ではない。


上映後のティーチインで覚えているのは、誰からも尊敬されている僧侶が昔家族を作って再び出家したという設定(劇中にそういう説明はない)にしたのは、文化大革命チベットでも信仰を禁止された時期が関係しているとのこと。主演の子は監督の親戚の子で利発だったので映画に使おうと思ったとか。若い母親役はチベットで有名な歌手。

「原発を止めるアジアの人びと」出版記念映画会

原発輸出を止める会・関東 主催

原発をとめるアジアの人びと―ノーニュークス・アジア

原発をとめるアジアの人びと―ノーニュークス・アジア

穏田区民会館でのドキュメンタリー連続上映会に参加。


台湾 2004年「こんにちは、貢寮(コンリャオ)」
日本原発メーカーが原子炉を輸出した台湾第四原発、建設阻止の住民運動を長年追った。2000年の政権交代で運転凍結になるも、新政権はあっさり政策後退して市民運動は敗北感に。2011年の福島原発事故以後に これまでにない50万デモを起こす。


オーストラリア 1997年「ジャビルカ」
国立公園のなかで先住民アボリジニ代表者の合意を得たとしてジャビルカ鉱山でウランを掘り出そうとする企業との戦い。後年採掘は撤退した模様。


インド 1999年「ブッダの嘆き」
ウランを詰めた古いドラム缶を地べたから素手で転がして貨車に載せるシーンが・・・


ベトナム 2012年「忍び寄る原発」(FoE Japan製作)
日本からの原発輸出計画されている村を取材。豊かな農作物が採れるところ。人々も屈託ない。地元の有志が日本の原発立地へ視察に行っていた。


ーーー短編4作ーーーー
韓国「プアン核廃棄場反対闘争・映像クリップ」
日本「アジア反核フォーラム 韓国への旅」
トルコ「ゲジ公園」「シノッブ」

「ビースト・オブ・ノーネーション」


東京国際映画祭2015 作品 新宿ピカデリーで鑑賞。
Netflix製作で映画作品という珍しさも。会場は2回目の上映だったせいか客数は少なかったけど、今年観た映画ベスト1は確実にこれ。ネット配給会社が作ったドラマと侮ってたら、予算と人間が充分に投入されて、しかも容赦無いリアルな描写が残像に残った。


西アフリカを舞台に主人公の少年(子ども)が政府軍に家族を殺され、逃げた先でゲリラ軍に生け捕りに、見習い兵士として必死に生き残っていく、目の前で命乞いをする民間人をナタで殺す事によって、鎖の切れた獣の様になっていくさま。戦禍の元で仲間ストライカーとの絆、上官への愛憎。


町を襲った先での虐殺シーンは、確実にトラウマになるだろう。
反政府ゲリラの指揮官との面談で、ビジネスマン風の東洋人が先に通されていくところなど、より現実世界に近い作り込みを感じる。本来なら救われるはずのラストの境遇も、社会復帰プログラムの困難さを描き出している。


南スーダンへ海外派兵を組まれてしまってる自衛隊が、地元の少年兵ゲリラたちと交戦に巻き込まれない様に願わずにはいられない。犠牲者が出てしまってからでは報復の流れは止められない。

If Only [ Kaash ]


東京国際映画祭2015 インド映画「If Only 」( Kaash )
舞台はNYとインド西部。NY在住で褐色の肌が理由でオーディションを落とされ続けている女優と、カメラマン志望の主人公。ふたりは別れる事になり男はSNSで知り合った女友達を頼りインド西部へ旅に出る。旅先でも心ここにあらずの未練と後悔、受け入れる側の女性も日常の閉塞感から逃れようとインドを場当たり的に旅する。色彩が印象に残るなと思ったら、イシャーン・ナーイル監督はファッション業界に長くいるひとで初作品だった。
来日してのティーチインでは二人の女優も。映画での演技は初めてだったとのこと。役柄として太めな体型だったのか、舞台ではより白く細く。より褐色の魅力だった。

「日本と原発 4年後」

渋谷ユーロスペースで観た。
自主上映そのものが脱原発運動です。 │ 河合弘之弁護士監督 映画『日本と原発』『日本と再生』公式サイト
311前から日本で原発訴訟に長年チカラを注いできた河合・海渡弁護士の愛嬌ってなんなんだろうと。司法は三権分立なんて名ばかりで人事や評価が怖くて簡単に「国策」と寝る慣習があるわけで、勝ち目が見えない困難な訴訟に、果敢に立ち向かうおかしなふたりの存在がいま頼もしい。河合弁護士の胸ポケットに付けてる昆虫のブローチはキャラ立ち戦略なんだろうか。


小雨の中の上映回で、客が少なかったにもかかわらず、河合弁護士がアフタートークをされた。今回の続編は、原発容認派の方にもインタビューしたり、分かりやすいアニメーションとか入れて中学生が視ても原発の問題点が分かる様に作ったとのこと。新垣隆氏のテーマ音楽が素晴らしかったので、ラストの日本の原発立地映像のところは長めでもカット出来なかったとのこと。
原発問題全般に危惧を持っている一定層が、空いた時間でお金を払って観ていると思うけど、中立的な立場の人があえて長編ドキュメンタリーを見にくるとは思えない。やはり長くても10分程度の細切れ動画の方が伝わりやすいと思う。
海渡弁護士のトークも面白いので、お二人で311以前の注目されなかった苦労話、泣ける話などノーカットで聞きたい気分。

「首相官邸の前で」

映画『首相官邸の前で』公式サイト - Tell the Prime Minister
渋谷アップリンク、横幅ゆったりなソファに腰をうずめて視る。自分は写ってなかった(多分)。

社会学小熊英二氏が主要メディアが注目しなかった金曜官邸前抗議を記録として残さねばと、無数の動画映像から許諾を得て、多様な人達のインタビューを混ぜながら作品にしたもの。ラスト近くに当時の野田首相と抗議行動主要メンバーの意見交換会的な映像は何か新鮮だったし、救われた気持ちにさえなる。話を聞きました的なセレモニーで流されるところをメンバーそれぞれが真剣に詰めていく。今でも無力感にさいなまれるけど、自分が無数の点として参加したことも無駄ではなかった。
小熊氏は これを観た後でディスカッションして欲しいという。
ラストの音楽もいい感じ。反原連の日比谷集会でも生演奏された、韓国の市民運動発の旋律が悲しくて強い。