前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

中国インディペンデント映画祭2015「癡(ち)」

ポレポレ東中野で中国インディペンデント映画祭
チュウ・ジョンジョン監督2015年作「癡(ち)」
長年思想犯として収容所に入れられていた老人のインタビューと、簡素な小劇場のセットを模しての淡い再現ドラマが、小刻みに交差する不思議な作品。中華人民共和国建国後の整風運動と冤罪だらけの反右派闘争が長めに描かれてるのが珍しいなと思う、しかも見てて痛みを伴わないストレスフリー。同時に起こった世紀の愚策「大躍進」で大陸中が飢餓に苦しんだはずだけど、全編淡々として生々しさは無い作風。


ラストにご本人の台詞がくさびの様に効いて来る。不当に弾圧されることによって、ひとは「それ」に成るんだなと。

中国インディペンデント映画祭2015「えぐられた目玉」「凱里ブルース」

中国インディペンデント映画祭2015
ポレポレ東中野で開催中、3回券買って視る。


徐童監督の2014年作品「えぐられた目玉」
前作同様に全身クセの強い人達が雄弁に語るドキュメンタリー、今回は地回りの芸人を撮っている。葬儀の鳴り物を担当したり遺族にお金をせびったり、ピンで即席の舞台に立って歌う様に語る、昔女関係でトラブルになり生きたまま「目玉を両方ともえぐり取られた」詳細を自らを嘆く芸。ただただ圧巻。老いた耳の遠い母を訪ねて話をするシーン、クセが妙な味になってる老漫才みたいで沁みてくる。


ビー・ガン監督2015年作「凱里ブルース」
ジャンルとしてはドラマ。冒頭から音響効果に気を取られてコレは独特だなと思わせる、映像のひとつひとつも、セリフにも何か違和感がある物が挟んで来る、それは後々の伏線的なものにループする仕掛け。後半の田舎町での迷走する様なロケ、カメラワークのヒトダマの様な動作、引きと寄りが異様で、軽く画面酔いしそうになって、受け手側の脳が視覚処理を嫌がったりもする。後になってワンカットで長時間撮ってた事に気付く。この監督の才能は突き抜けてどうかしている。

戦後70年ミニシンポ 5「南京虐殺事件から78年〜忘却化のたくらみにいかに抗うか」

戦後70年ミニシンポ – 2015年春から原宿でミニシンポを4回実施。
先日放送されたNNNドキュメント南京事件 兵士達の遺言」
https://youtu.be/GI-7PC99bLs
元従軍兵士の陣中日記を20年にわたって収集活動されている小野賢二さんのお話を直接聴く会に参加。番組は視てたのにお話を聴くまで同郷の方だと気が付かなかった。レイバーネットTV第96号の特集でもたっぷり取り上げられていた。当時捕虜大量虐殺に関わった疑いのある軍医が、戦後政界入りして福島原発誘致活動に関わっている話には絶句。
https://youtu.be/QeX3NNozVr0?t=9m55s

イスラーム映画祭2015

http://cineville.jp/iff/
渋谷ユーロスペースイスラーム映画祭。いつものユーロスペースなら直前に行っても大丈夫かなと油断してたらロビーがもう超満員で驚いた。いつもの場所じゃない感じ。30分前に整理券が140番代でもう立ち見ギリギリセーフなり、階段に座ってたひとも。普段日本国内のワールドニュースで雑に扱ってるイスラーム圏を題材にした多様な映画を見たい人が多いんだなぁと嬉しい誤算なり。


「禁じられた歌声」西アフリカ マリの古都トンブクトゥを舞台に、コーランを曲解した原理主義武装集団に支配された街の人々の暮らし、いざこざを避けて郊外に暮らす親子が、否応なく巻き込まれるドラマ。
動画サイトに少年が懺悔している姿を投稿させようとしたり、女性に肌を隠すように手袋を強要したり、サッカーを禁止にしたり、音楽を禁止にしたり、略奪婚を正当化したりと、上から命令される場当たり的な決まり事に、強要させている側も悩んでいる様子が描かれている。
禁止を避けて透明なサッカーボールを蹴り合って走るシーンは詩的。


上映後のトークで、前回来日した監督がソ連時代にモスクワで映画を学んだ面白エピソードを聴く。作品で血が飛び散る様な残虐シーンを描かないのは、技法で充分伝わるからだという。


ドキュメンタリートンブクトゥウッドストック
砂漠の野外音楽フェスを機材起ち上げからライブ終盤まで記録している。ライブシーンよりも印象に残ったのは、肝っ玉母さんが丸々太った子どもに授乳するシーン。女性監督だからか、現地の女性たちの家事子育てと日常の延長が 飾り気なく写っている。子供たちの遊ぶ姿も屈託ない。翌年から内戦勃発でライブは開催されていないという。

ニュークリア・サベージ 極秘プロジェクト4・1の島々

江東区で夜から 原発事故情報共有学習会 自主上映
『ニュークリア・サベージ 極秘プロジェクト4・1の島々 Nuclear Savage The Islands Secret Project 4・1 』
(東京労働安全衛生センター・有害化学物質削減ネットワーク主催)


ビキニ環礁で繰り返された水爆実験で、故郷を汚染され苦しむ島民たちを翻弄する帰還政策、健康被害、長年データだけ獲って治療すらしない米国政府の「人体実験」機密文書を暴露したドキュメンタリー。本国から派遣された白人の女性駐在官が核実験の記念式典で「冷戦時代に貢献した」とスピーチ。


上映始まってしばらく・・・以前観たことがあることに気付く。何処で観たのか思い出せないのが本当にショック。学習会だったとしても、やはり備忘録としてブログに残さないとダメだなと痛感。

インドへの原発輸出 日印原子力協定阻止キャンペーン」

夜は港勤労福祉会館で協賛団体多数の「インドへの原発輸出 日印原子力協定阻止キャンペーン」FoE Japan | 福島支援と脱原発
日本メーカー製の原発をインドへ売る前提で「日印原子力協定」へ安倍が訪印予定という。来日中のヴァイシャリ女史と、国会前でも日本語で強く抗議スピーチしてたクマールさんの熱弁を聴く。インド国内で原発反対運動への政府の暴力は熾烈なのに、苦難の結実を享受してるだけで申し訳なく思いつつ、安倍の背後に放射線マーク、英語で書かれた抗議文のイラストは秀逸。

「放射線を浴びたX年後 2」

劇場映画 「X年後」2 公式サイト
ポレポレ東中野で視る。
南海放送 (愛媛)製作 伊藤英朗監督「放射線を浴びたX年後」1946〜1962年の間 太平洋ビキニ核実験での被ばく被害が「第五福竜丸」以外にも数多くあった事実を掘り起こした、高知の高校教諭の長年の調査活動を紹介したドキュメンタリーが劇場版第一弾。先に日テレ深夜枠「NNNドキュメント」でTV版が放送された。劇場版の公開後には継続調査をTV枠で放送された。厚生労働省への情報公開請求で当時の漁船の被ばく線量が書かれた調査記録文書が一部公開されたけど、数値のほとんどが黒塗というペーパーに心底驚いた。今更何故?秘匿して何を守ろうとしているのか分からない。合衆国エネルギー省の核実験後のデータでは放射能の雲が遠く日本列島をも覆った。古い建物の軒下の土をサンプル調査にかけて放射性物質を検出したり検証に工夫している。


前作の映画を全国上映して回っていた時に、当時マグロ漁船に乗っていた父を持つ東京在住の川口美砂さんが若くして亡くなった父の死に映画を通じて疑問を感じ、ふるさと高知に通いながら当時を知る生存者の聞き取りを始める。これが映画版続編のおおよそのはじまり。乗組員の古い集合写真で名前がどんどん分かってくるところまで大変だったと思う。
船員手帳のある年だけ破られている事が、漁協の保険事務をしていた方から語られる。


当時の日本政府は米国から見舞金を受け取って責任を問わない事にするばかりか、水揚げされたマグロの検査すらしなくなった。相当量が流通して食卓に出されたんだろうなと。