前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

イスラーム映画祭2015

http://cineville.jp/iff/
渋谷ユーロスペースイスラーム映画祭。いつものユーロスペースなら直前に行っても大丈夫かなと油断してたらロビーがもう超満員で驚いた。いつもの場所じゃない感じ。30分前に整理券が140番代でもう立ち見ギリギリセーフなり、階段に座ってたひとも。普段日本国内のワールドニュースで雑に扱ってるイスラーム圏を題材にした多様な映画を見たい人が多いんだなぁと嬉しい誤算なり。


「禁じられた歌声」西アフリカ マリの古都トンブクトゥを舞台に、コーランを曲解した原理主義武装集団に支配された街の人々の暮らし、いざこざを避けて郊外に暮らす親子が、否応なく巻き込まれるドラマ。
動画サイトに少年が懺悔している姿を投稿させようとしたり、女性に肌を隠すように手袋を強要したり、サッカーを禁止にしたり、音楽を禁止にしたり、略奪婚を正当化したりと、上から命令される場当たり的な決まり事に、強要させている側も悩んでいる様子が描かれている。
禁止を避けて透明なサッカーボールを蹴り合って走るシーンは詩的。


上映後のトークで、前回来日した監督がソ連時代にモスクワで映画を学んだ面白エピソードを聴く。作品で血が飛び散る様な残虐シーンを描かないのは、技法で充分伝わるからだという。


ドキュメンタリートンブクトゥウッドストック
砂漠の野外音楽フェスを機材起ち上げからライブ終盤まで記録している。ライブシーンよりも印象に残ったのは、肝っ玉母さんが丸々太った子どもに授乳するシーン。女性監督だからか、現地の女性たちの家事子育てと日常の延長が 飾り気なく写っている。子供たちの遊ぶ姿も屈託ない。翌年から内戦勃発でライブは開催されていないという。

ニュークリア・サベージ 極秘プロジェクト4・1の島々

江東区で夜から 原発事故情報共有学習会 自主上映
『ニュークリア・サベージ 極秘プロジェクト4・1の島々 Nuclear Savage The Islands Secret Project 4・1 』
(東京労働安全衛生センター・有害化学物質削減ネットワーク主催)


ビキニ環礁で繰り返された水爆実験で、故郷を汚染され苦しむ島民たちを翻弄する帰還政策、健康被害、長年データだけ獲って治療すらしない米国政府の「人体実験」機密文書を暴露したドキュメンタリー。本国から派遣された白人の女性駐在官が核実験の記念式典で「冷戦時代に貢献した」とスピーチ。


上映始まってしばらく・・・以前観たことがあることに気付く。何処で観たのか思い出せないのが本当にショック。学習会だったとしても、やはり備忘録としてブログに残さないとダメだなと痛感。

インドへの原発輸出 日印原子力協定阻止キャンペーン」

夜は港勤労福祉会館で協賛団体多数の「インドへの原発輸出 日印原子力協定阻止キャンペーン」FoE Japan | 福島支援と脱原発
日本メーカー製の原発をインドへ売る前提で「日印原子力協定」へ安倍が訪印予定という。来日中のヴァイシャリ女史と、国会前でも日本語で強く抗議スピーチしてたクマールさんの熱弁を聴く。インド国内で原発反対運動への政府の暴力は熾烈なのに、苦難の結実を享受してるだけで申し訳なく思いつつ、安倍の背後に放射線マーク、英語で書かれた抗議文のイラストは秀逸。

「放射線を浴びたX年後 2」

劇場映画 「X年後」2 公式サイト
ポレポレ東中野で視る。
南海放送 (愛媛)製作 伊藤英朗監督「放射線を浴びたX年後」1946〜1962年の間 太平洋ビキニ核実験での被ばく被害が「第五福竜丸」以外にも数多くあった事実を掘り起こした、高知の高校教諭の長年の調査活動を紹介したドキュメンタリーが劇場版第一弾。先に日テレ深夜枠「NNNドキュメント」でTV版が放送された。劇場版の公開後には継続調査をTV枠で放送された。厚生労働省への情報公開請求で当時の漁船の被ばく線量が書かれた調査記録文書が一部公開されたけど、数値のほとんどが黒塗というペーパーに心底驚いた。今更何故?秘匿して何を守ろうとしているのか分からない。合衆国エネルギー省の核実験後のデータでは放射能の雲が遠く日本列島をも覆った。古い建物の軒下の土をサンプル調査にかけて放射性物質を検出したり検証に工夫している。


前作の映画を全国上映して回っていた時に、当時マグロ漁船に乗っていた父を持つ東京在住の川口美砂さんが若くして亡くなった父の死に映画を通じて疑問を感じ、ふるさと高知に通いながら当時を知る生存者の聞き取りを始める。これが映画版続編のおおよそのはじまり。乗組員の古い集合写真で名前がどんどん分かってくるところまで大変だったと思う。
船員手帳のある年だけ破られている事が、漁協の保険事務をしていた方から語られる。


当時の日本政府は米国から見舞金を受け取って責任を問わない事にするばかりか、水揚げされたマグロの検査すらしなくなった。相当量が流通して食卓に出されたんだろうなと。

「三姉妹 〜雲南の子」

https://youtu.be/11a65y1efPM
2012年東京フィルメックス映画祭で見逃したワン・ビン監督2012年作「三姉妹 〜雲南の子」を新宿K'sシネマで鑑賞。
標高の高さもあってか霧や強い風、水たまり。手持ちビデオの暗い廃屋の映像が長回しで続く。親類に預けられて小間使いの様な身分、まだ小さくとも長女がやらされる仕事は多い。家畜の糞を集める男の子は気が張ってて頼もしい感じ。元は可愛い一張羅の服のよごれ方が。鼻を拭いてあげたくもなり。明るいシーンといえば、村の裕福な家で全員に振る舞われるご馳走と食卓に集う子どもたち。
欧米の映画賞を獲っているこの作品に寄せられている高い評価の文章が、自分には悪い冗談の様にズレまくって感じる。
画面の暗さと尺が長過ぎる感。記録映画だもの。

「種まきうさぎ フクシマに向き合う青春」

『種まきうさぎ フクシマに向き合う青春』公式サイト - ドキュメンタリー映画 種まきうさぎ〜フクシマに向き合う青春〜公式サイト
ポレポレ東中野で鑑賞。テーマは重いけど作風は軽やかだった。
311後のフクシマの今を伝えようと活動している地元高校生の朗読グループが、高知で被ばくマグロ漁船を調査している高校生チームと交流したり、卒業後にはマーシャル諸島の核実験跡地での60周年式典へ参加するために行く、帰国してから持ち帰った宿題を日本の高校生にスピーチで渡す。種まき、の数としてはわずかにしか見えなくても、原発事故、核実験、放射能汚染と向き合うしかないサバイバーとして人に伝えていく試みは続く。


長年積み残した宿題を綿毛の様なタッチで指摘されているような、ただただ年配の人間として申し訳ない。ナレーション大竹しのぶ 偉いです。


上映後に監督とゲスト保坂展人世田谷区長でアフタートーク原発事故に自治体はどう取り組むか」
311震災直後からどう動いたかという話と、区長になってから継続的な被災地支援と、区内の施設を開放して年二回、福島から親子の宿泊を受け入れているとのこと。世田谷区の民家で放射線量が高いところが見つかった時の話で、(昔蛍光塗料に使われていた放射線ラジウムの瓶から放射されてた)後に北池袋の公園でも騒ぎがあったけど、他では聴かないですねという話の流れで、分かっても他の自治体は「あえて公表しない」ということもあるのかな、と言われた時に、背筋が寒くなると同時に、身近にある行政システムが本質的に信用ならないなと思い知らされた。これもフクシマの教訓。

「太陽がほしい 〜「慰安婦」とよばれた中国女性たちの人生の記録」

映画「太陽がほしい」ホームページ / ドキュメンタリー映画舎 人間の手
今年2015年に完成した中国大陸の旧日本軍による戦時性被害者を訪ね歩いて証言を記録した作品。
JR大久保駅近く 日本キリスト教会 柏木教会を会場に班忠義監督を呼んで上映会。
教会の上映会イベントを知って一般参加。上映前の主催者挨拶と簡素な集会所で信者の皆さんの賛美歌を聴く。長年の取材中に記録に映されているほとんどの方が亡くなっている今、せめてもの慰めにも思う。
上映後に監督のトーク、ダイジェスト版でも二時間弱。妙な自主規制が広まっている昨今、日本人として傍観するだけで申し訳ないと思う。陽が当たらない地道な記録に感謝。遠い過去の資料として死蔵させないように陽のもとに出さないと。