前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

奥さまは愛国 〜彼女たちは何を愛し、守ろうとしているのか?

奥さまは愛国

奥さまは愛国

ネトウヨでは一括りに語れない愛国いろいろ、人生いろいろ。体験を通して肉付けしてもヒト個人個人のイメージする世界観や民族像は勝手な愛憎で出来てるクレイアニメかと思う。取材対象のテーマの重さに比べて著者ふたりの文体が軽やかなので読みやすい。


在特会デモに参加していた女性たちや、花時計、そよ風、某乳幼児教室、あるいは単独行動での反日教組、様々なかたちの愛国運動の活動を潜入取材やインタビューして感じた共著。著者のひとりフェミニストとして知られる北原みのりさんの著書は読んだことがないけど、都内の従軍慰安婦追悼デモに参加してカウンターになじられながら感じた、「9条」など平和運動コール表現への違和感は共感するものがある。日本の平和市民運動は複雑な紆余曲折があるとは思うけど、男性イコール好戦、女性イコール平和という素朴過ぎるフェミニスト(これも田嶋陽子独りで単純バカ化は出来ぬ)日本の戦争責任を告発し裁く運動が一般には広く支持されなかったまま世紀を跨いで、可視化された銃後の守り大好きナデシコ集団とガチで対峙していることにも驚く。愛国を説く人が持つ「日本人であること」への根拠のない優越感には常に唖然とするけど、どの国にも一定数は自画自賛バカは居るとか、応答責任を逃れていた結果が今現在なのかとも思う。


在日三世で結婚して帰化した朴順梨さんの子ども時代の思い出で、普段おとなしいクラスメート男子からいきなり殴られたという傷みより、隣のクラスの子に「外国人なんてカッコイイ」と言われた時に戸惑い(だったらあんたも、在日になってみる?)と言いたかったという記述が、結構自分の在日外国人イメージを言い当てられた感じがした。90年代以降のアイヌ文化伝承周辺でも、開拓地での積年の差別事例など知らない札幌在住の若者が「アイヌ、カッコイイ」と言われたとも聞いたので。血液型性格診断とか大嫌いなくせに、色々な民族の血が入っている方がタフで適応力がある様に勝手に思っていた自分に対して、あんたもなってみる?と問われれば生理的に否定するだろう。バックパックで国々を貧乏旅行してた時に味わった、ステレオタイプの日本人イメージを否定しては憤慨してた体験もよみがえる。
身も蓋もないけど、雑種じゃない純血民族や高貴な血統なんか、新築マンションのチラシみたいで楽しめない。


愛国女性のつどい 花時計という団体は駅前繁華街などで、愛国啓蒙活動をしている女性団体らしい。
寸劇で批判している (元慰安婦というお婆さんはウソ、売春婦、お金が欲しくて騒いでいる) というのは以前からネットでも散見されたいたという。
お金が欲しくて騒いでいる というのは、市民運動を貶す側のキメ台詞らしい。最近は水俣病語り部へ嫌がらせの匿名電話が来るとニュースになっている。このセリフも軽薄だとスルーも出来ない、権力悪を監視すると標榜する側の左系市民団体にも、企業から金をもらっている御用学者とかマスコミとか非難する定型文はよくある。社会問題への告発は共感できるけど、フレーズを単純化すると金が貰えず嫉妬している団体と誤解される心配はしないのだろうか。
大手マスコミへの不信と怒りは愛国派でも左派でも同じだったりする。真実は自分たちだけが知っているとか啓蒙すれば、また日本社会の宗教アレルギーに弾かれて、主語もなく寛容を語る人が最強にて対話を殺す。


慰安婦問題に男性が抗議すると「女性をいじめている」と受け取られるから、同じ女性がレイプ犯と言われてたおじいさんの潔白を主張するのだと・・・・他の行動保守を自認する女性の言い分も似ている。左派が「軍靴の響き」を好んで使うのに似て、誇り高き日本兵は強姦などしない、という故意に欠落した想像上の軍隊。戦前に人身売買で売り飛ばされたてシベリアやアフリカのザンジバルまで流れて行った「からゆきさん」の郷愁に和服を高額で売る商人や、海外の軍事情報の最新動向に使った経緯を思う。それも現代の日本人は金目当てのプロの売春婦だとあざ笑うのか。


巻末に在特会など街頭参加者は男性が多い、女性は少数と前提の現状を書かれてもいる。


東京に長く住んで石原慎太郎都知事の人気の理由がサッパリ理解出来なかった。自分の周りには支持者は見当たらなかったし、特にババア発言は政治家として終わりだったはず。しかし、本に書かれている竹田恒泰氏の講演トークに喜んで笑っている女性客の描写で、ちょっとだけ腑に落ちた。男性/女性の性差で侮辱されても、聞き手自身に引きつけるチカラなどないんだ。むしろ病んだ奴らを識別し覚醒している自分は選民であるという優越感に酔えるのかもしれない。社会的弱者を「被害者意識」過剰boxに回収しての嫌悪ルートは想像も出来なかった発想。311以降に弱者目線で当事者を騙る奴ら!というふざけた言説を幾つか目にした事を思い出す。本音の対話は傷つけるだけだから回避するけど、あんたには「お花畑」「放射脳」「プロ市民」「ネトウヨ」「反日」とかキャラ付けしてやるよとでも言いたげな。「ゴー宣」以後の魑魅魍魎な生物多様性のなか、自虐史観というフレーズの人気は未だ根強い。郷土愛・地元愛と地続きにすら思える「日本人へのヘイトスピーチやめろ」というセリフには無限の免罪符を感じる。


十年前位から書店で目立って増えていた中韓バカ本が平積みされているなかで、河出書房新社の若手編集者がフェアを企画した中にこの本があった。http://www.kawade.co.jp/news/2014/05/post-89.html
このフェアに協賛している本屋さんを応援したい。