消されゆくチベット
- 作者: 渡辺一枝
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/04/17
- メディア: 新書
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Kindle版で読了。2005年夏にウイグル〜チベットと旅して以来、主に東京で「チベットの文化と歴史学習会」に参加していたけど、最近は間が空いているので、チベットでの出来事はWebニュースなどで抗議の焼身自殺や拘束が続いている以外は分からなかった。
神楽坂セッションハウスで渡辺一枝さんのチベット写真展とトークの会が行われるのを知って聴きに行った。聴衆は50人位だった、最近チベットを話題にする機会がなかった様で、写真展は釣りのようなものですと冗談。
それでも新書タイトルと同じ写真展「消されゆくチベット」断腸の思いで付けたものだと思う。1987年から毎年のようにチベットを訪れているなか、パネルは90年代頃の写真が多かったと思う。
これまで約四半世紀チベット各地を旅したり、長年交流している家族との付き合いが長いからこそ、世紀を跨いでここ数年のチベットの激変は激しい憂いを受けていることが語り口から伝わる。
中国の名ばかり自治区のチベット、昔からチベット族が住む青海省、四川省、雲南〜ネパールなどでこれまでに抗議の焼身自殺は130件を超えているという。まるで祈るために生きている様に視える彼らにとって、自死行為は罪なはずだけれど、自らを灯明にするまで追い込んでいる日常の社会は酷くなっている。ゴルムドからラサへ鉄道が通った後でも外国人の個人旅行は禁止され、入境許可も狭められているとのこと。以前なら巡礼の旅にも行けたチベット人の移動の自由が無いという問題。ラサ各地や大きな寺の周辺には2008年3月の大規模な抗議運動以降は監視カメラが増えているとのこと。チベット人公務員は身近なお寺でも巡礼までが自粛されている。今現在大きな寺院で見かけるのは中国人観光客で首都ラサの7割近くは漢人という人口構成に。
とはいえ、チベットの言語や文化を消さすに抵抗する試みは、社会の締め付けが厳しくなるほどチベット人たちの中で強くなっているという。その苦悩を想像するだけで気が遠くなるけど、近い将来、博物館にチベット文化を過去の遺物として死蔵されない様に、こちらも関心を持ち続けていく。