前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

福島原発事故 県民健康管理調査の闇

福島原発事故 県民健康管理調査の闇 (岩波新書)

福島原発事故 県民健康管理調査の闇 (岩波新書)

読み終わってからかなり日が経ってしまった。読み返すと「情報公開」開示がどれだけ役にたっているのかを思い知らされる。
毎日新聞記者が追った東京電力福島原発事故後の「県民健康管理調査」関係者のリークで秘密会の存在を知る、出席者の裏付けを取り、情報公開法で取り寄せた議事録と言質の虚偽を当事者たちへ突きつけていく。検査結果を受け取る県民・広くは国民への「不安をあおらない」ための打ち合わせ。県民の不信感は増すばかり。説明会で住民が望まない質問をすると「プロの活動家」扱いするメンバーもいる。傲岸不遜(ごうがんふそん)


「リスクコミュニケーション」は、原発事故以後には「不安をあおらない」という目的の手段にすり替わっている。選ばれた県民健康管理調査メンバーは「影響は認められない」その結論へ合わせる様に事前の予行演習と打ち合わせをしていた。




内部被曝を調べるための乳歯の保存やホールボディカウンター検査も健康管理するはずの県は避けてきた。がん検診も診察結果の画像や細かいデータを本人には開示しないという対応の酷さ。
甲状腺がんの検査を一人あたり短くするために、観察項目などを省いたりもしている(P145)。効率化優先で見落としが多発したら、形だけの検査済み、やりましたというデモンストレーションなのか。東電管理の仕事ぶりと似て体裁だけを優先する専門家集団が雑な「国策事業」の元、思いつきの様に作られ続けているのかとも思う。
知事の存在感が薄いなかで福島県庁の健康管理調査の主導権もよく分からない。
後世に責任を問われる行政・専門家のポストへ県内出身者を立てるところは非情なくらい政治的。植民地内統治のつもりだろうか。


新書タイトルに付けられた「闇」は昔ながらの陰謀論とも誤解されそうで、むしろ帯の「誰のための 何のための、調査なのか」を副題にして欲しかった。