前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

チェチェン 廃墟に生きる戦争孤児たち

チェチェン 廃墟に生きる戦争孤児たち

チェチェン 廃墟に生きる戦争孤児たち

ノルウェー出身のジャーナリストによるチェチェン紛争現地ルポ。冒頭の戦争孤児たちの状況描写に引き込まれるが、ちょっと生々しさが恣意的かと思う。丁寧な補足にもなっている訳者あとがきにも指摘されているように、著者はチェチェン人にとって敵性語のロシア語が堪能で、チェチェン語になるとある程度は通訳頼みという処も留意しておくべきかも。


2006年10月に暗殺されたジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤとの接点を重ねながら、ロシアの傀儡政権のリーダーとのインタビューでは事件への関与を質問している。
根強い民族間憎悪と拷問と復讐の連鎖を綴りながらも、ロシア側ばかりを悪とは描かないこのバランスは、読み手に深い問いかけを投げつける。

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アメリカなどキリスト教文化圏で制作される「すっきりした」タイプのドキュメンタリー物だと、イスラムの因習で抑圧される女性を助けるべき、といった主張は今までよく使われていると思う。それがテロとの戦い空爆容認まで認めて、現地の民間人が大勢死んでも無関心という人々は潜在的に多い気がする。そういった紛争地の民族への先入観を安易に増長しそうで危うい記事も入っている。チェチェンでの家の名誉が絡んだ肉親女性への名誉殺人。
短い文章とはいえ個人的にはこれが一番重たかった。 受け手側に判断を任せる書き方だと思う。