前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

満蒙開拓団の戦後

8月に再放送されたNHKハイビジョン特集からふたつの番組を今頃視る。
「取り残された民衆〜元関東軍兵士と開拓団家族の証言〜」(2006年制作)
満蒙開拓団が事実上日本国に捨てられた悲惨な記録を、元開拓民・元関東軍の生き証人たち貴重なインタビューを時系列で構成したもの。記録に残しておく意味を充分に感じながら同時に、思い出したくない悲惨な実体験を語ってもらうことの罪を、視る側にも痛く与えてくれる。
平和イベント8月ジャーナリズムの枠には入れたくないけど、この労作に現代との直接の繋がりを見出せない。



「地獄を見たから生きてこられた〜満蒙開拓団の戦後〜」2007年制作
ソ連参戦による満蒙開拓団の混乱と引揚げから、本土で再度開拓に賭けた4つのグループの戦後を紹介した番組。前から知りたかったテーマでもありインタビュー構成と視点がとても面白い110分。


吹雪く山麓や、洪水襲う低地、それぞれ環境も厳しいなかで、それぞれ若い団長の臨機応変な実行力がもの凄い。廃棄処分の旧日本軍の戦車を三菱重工に掛け合って二台譲り受け、廃土板を溶接して改造ブルドーザー。人が住めない岩と森の山麓を元戦車で整地してしまうエピソードとか、豪快で面白いけどここまで実行するには相当な指導力と個性の強さではと思わせる。別の開拓地ではブルトーザー作戦は土壌の質を悪くして失敗してしまうが。
新たな開拓地でようやく苦労が実って順風満帆に思えた頃に台風や地震など災害が襲う。
洪水後に流木をかき集めて毎回集会所を建ててしまうバイタリティもあり。
二度目の洪水後に訪れた農水省の職員に「ここでダメならサンパウロに・・・」と言われた事を笑って話す。


厳しい環境で貧しい共同体が収入や財産を「みんなのもの」として一緒に苦楽を共にして成長していく、ある程度余裕が出てくると個人の当たり前の主張や、子どもの将来や共同体から出て行く選択が生まれて来る。
自分の頭の中で重なるのは今年6月に放送された「祖国と大地〜ブラジル移住・大家族の夏〜」でのユバ共同農場ともう一つの農場のあれこれ。


満蒙開拓団の第一号でモデル村だった弥栄村開拓団が戦後に北海道で酪農の村を開拓していた。日本統治下の満州各地の開拓団に建てられていた神社の雛形を作った宮大工の子息がインタビューに答えていた。
番組の終わり方も非常に面白い。インタビュー中のノイズ、柱時計の音をそのまま使って画面が退いていき、最近導入したという自動化された搾乳「工場」の映像で唐突に終わる。