前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

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緑の革命とその暴力

誰もがスーパー・コンビニなどで小麦原料商品の値上げ驚くこの頃。大昔に社会の授業で覚えさせられた『緑の革命』の実態を今頃知る。

緑の革命とその暴力

緑の革命とその暴力

著者のヴァンダナ・シヴァはインド在住の科学者で哲学者。60年代からパンジャブ州で行なわれた農業増産プロジェクトの詳細を調査し、結果として起きた農村社会と自然環境の壊滅的な荒廃を、詳細な資料をもとに解説し警鐘している。原書は91年刊。


元々は河も多く流れる肥沃な土地で多品種の作物を連作するようなところに、ロックフェラー財団・フォード財団・世界銀行・種子や農薬を製造する多国籍企業、インド政府と行政機関が主導で、単年度に単品の収穫量を増やす大規模実験が行なわれた。
これは当時の第三世界に処方された緑の革命と呼ばれる、農業増産プロジェクトのひとつ。化学肥料や機械化で大規模農業の収穫を増やす・・・ハズだった。
膨大な量の化学肥料と農薬の投入、単作ばかり繰り返すと土壌が痩せる。HYV(高収量品種)ひとつの穂に沢山の実がなるように品種改良された麦や米は、成長するために水を在来種の3倍近く!も必要とする、各地に新たな灌漑用ダムを作ったものの、そのため深刻な水利権争いや逆に水害が起きた。80年代になると土壌も荒廃して収穫も激減していき結果的に地元農民であるシク教徒と中央政府との対立、有名なゴールデンテンプル/黄金寺院事件が起き、80年代後半には1万5千人単位の死者を出した紛争の要因にもなっているという。当時も今も国際ニュースでは宗教紛争として騙られている。


戦争が終わり先進国の爆薬工場を転用して作ったという化学肥料の奨励を緑の革命として、続くバイオ革命を遺伝子作物として紹介されている。はじめに強力な農薬ありき(ベトナム戦争枯葉剤と同種だったりする)で、それに耐性のある遺伝子作物を『開発』してセット販売するという商法。これはまだ世界各地で行なわれている。世界銀行などの国際機関が言う貧困の撲滅キャンペーンにはこんな商法もあり。
88年からインドで開始されたペプシコ・プロジェクトの紹介で、ジャガイモのラセット・バーバンク種の単一栽培は病害のリスクを伴うのに行なわれているのは、マクドナルドのフライドポテトに加工しやすいサイズに成長するからだと紹介されている。


ヴァヴィロフ・センター(植物の遺伝的多様性に富む中心地)という言葉を本書で知る。ソ連の有名な植物学者の唱えた考え、そういえばインドとソ連は友好国だったはず。




先進国以外の国では首都に人口が一極集中して地方都市が生まれない。それは緑の革命以降、農業の余剰労働者が都市へ仕事を探しに出て巨大なスラムに住み着く社会問題にも繋がると聞いたこともあり。