今は不自由の女神でも
報道が教えてくれないアメリカ弱者革命―なぜあの国にまだ希望があるのか
- 作者: 堤未果
- 出版社/メーカー: 海鳴社
- 発売日: 2006/04/28
- メディア: 単行本
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2004年大統領選を目前に、市民運動もしたことがなかったひとりの男が電子投票のウソに憤り、絶食したまま保守層の町へ乗り込んでチラシを配ったり、スピーチしたり、運動を監視している末端の警官に銃を突きつけられて安ホテルを追い出されたり。行動は無謀だけどアメリカの監視社会の実証にもなっている。
個人的に面白かったのは、ある種の運動家への審美眼ともいえる描写。個性の強さから協力に繋がらない例を感じた。小柄なのをからかわれては、今も子供料金で映画館に入れると返す著者は、経歴から邪推すると今まで幅広いタイプの沢山の人々と出合っては、闘ったり共感してきた猛者ではないかと思う。
米軍の新兵リクルートの巧みなテクニック/詐欺商法を取材した内容も驚かされる。低所得者の家庭が多い地区での個人情報や青年の携帯番号を使って行なわれるローラー作戦。入隊さえすれば希望する大学進学への高い学資を稼げるという殺し文句も、実はウソでイラク派兵先でも少ないサラリーから引かれて積み立てられる仕組み。防弾チョッキ代さえ給料から引かれる現状はもの凄い。そういえば最近放送されたNHKスペシャル「ワーキングプア3」でも米国編で失職した40代男性の元プログラマーがキャンプ場で暮らして、未だに裁判所から大学時代のローン督促状に追われながらファストフードで働いていた。
記者にどう対処するか徹底して訓練されているはずの軍の新兵補充リクルーターが途中から素で語ってしまっている。新兵の入隊数のノルマに追われる恐怖・体罰を告白してもいる。元リクルーターが言う、自分にウソを並べてリクルートした職員の当時の気持ちが分る・・・という優しさはなんだか切ない。
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大統領選挙での電子投票による大掛かりな不正は一部メディアで報道され続けたけど、戦争ビジネスを続けるブッシュ政権は無視を通している。選挙結果は貧困家庭の青年を兵士にしてイラクへ送り続け、殺し殺される現場にも直結している。
日本でも電子投票の本格導入の動きがある。利便性の主張は強いけどイカサマ放題のブラックボックスは個人の投票権まで捨ててしまう事になりかねない。今でさえ立候補者たちから選ぶ「一票」は、ガラクタを山積した激安ショップでの買い物に似てるのに。
今年からCS朝日ニュースターで日本語版放送が始まった「デモクラシー・ナウ!」のナビゲーター役で著者を知る。webでも字幕つき動画が視られる、恐ろしく面白い独立系メディアだと思う。主張に同意する・しない、はともかく毎回呼ばれる各界からのゲストの巧みな話術も唸らせる。ある回ではスタジオの中で鈍いノイズが響いて、いま古い消防署の建物に豪雨が打ちつけてます。と状況説明されたりする。
今年2007年に知って得した希望あるメディア。この有志のみなさんに感謝。