前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか? デラックス版 [DVD]
先日名画座エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』を観た。
優良成長株ともてはやされていた米国のエンロンが2001年末に突如崩壊する。その後の裁判や調査を内部関係者の証言を織り交ぜて、会社の実態と数々の株価操作、不正経理のやりくちを解き明かす長編ドキュメンタリー。


前日分に書いた作品との重たい社会派な二本立て、思ったより客の入りが良くて一番前で観る。お陰で証言者の顔が大きすぎて幻臭にもおそわれた。眼が異常にギラついてアゴのたるんだ元トレーダーの口からはジャンクフードとひき肉の腐臭がする。元管理上層部の女性の香水のキツイ匂いも。
これらの世界には接点の薄い屋外労働者としては、この業種へ病んだ偏見が更に強まった。(まぁお互い様かな?)


不正が明らかになって思うのは、それぞれの詐欺操作が幼稚なこと。机上の空論で予想される将来の利益まで現実の会計に入れている。証券アナリストなど自社に不都合な分析をする関係者を除外する「広報活動」も、有名企業には常識なのかもしれない。
この映画ではエンロンの不正を知りながら共謀していた証券会社や銀行など有名な名前もいくつか挙げられていたけど、その後の処分は聞かない。


鑑賞後の不消化を埋めるために読む。
粉飾資本主義―エンロンとライブドア
「粉飾資本主義 ーエンロンライブドア奥村宏/著


エンロンライブドア事件との共通性は当時指摘されてもいた。時系列はともかく素人の自分にも読みやすい。
エンロンの確信犯とライブドアのグレーな容疑が、ふたつの事件の根本的な違いはある。
会社の粉飾決算を見逃していた(加担していた)会計事務所の処分も違う。映画では証言のなかで(歴史的に古い会計事務所が消えた)と紹介されていたアーサー・アンダーセン会計事務所が有罪判決で廃業していた。米国の5大会計事務所のひとつとして、世界84ヶ国に8万5千人ものスタッフをもつ規模だったそう。
ライブドアを担当した会計事務所は社会的制裁を受けていない。日本では一般に顧客でもある株式会社に会計会社は不正を指摘できないという風土で説明されてしまう。


著者は両社の社会的・道義的責任により多く言及している反面で、専門家になると有名企業の実態を具体的には書けないのかと邪推もする。
西武鉄道の株主名義偽装事件など、業界では長年広く知られた事実だったとも聞くし、