前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

国境に続く満州里

満州里での朝。バスターミナルではロシア行きのバスが客を乗せて停まっていた。こちらは壁に貼ってある国内バス路線図を視て、明日の行き先を練る。


簡単な市街地図で自由貿易区の位置を確かめて北へ歩き出す。街の端に出来たばかりのロシア風な建築、大型商業城の名前に「義烏•」と書かれていた。中国一の日用雑貨市場の名前を拝借したのか、街の商用提携なのかは不明。


国境に続く広い舗装路に沿って、冷たい風が吹く草原の丘を越える。左手に貨物列車、遠くに火力発電所、その手前になぜか高そうなホテルがぽつんと建っている。丘の上の丸いドームの建物は体育館だった。隣にはスタジアムや大学院など建設予定地が続く。


丘を下ったあたりに巨大なマトリョーシカを発見。

ちょっと待て、隣の教会と同じ高さだぞ。近づくにつれマトリョーシカに描かれた絵柄よく言えば「きいちのぬりえ」風なかわいさ。

中露蒙の国旗がひるがえる建物を過ぎて、産業技術の国際展示場など覗く。自由貿易市場を目指して歩いたけど、地図情報が古かったのか、この当たりも開発で変貌しているのか。ここで街へ引き返す。





路線バスの運行間隔が読めなかったので、往復6キロくらいの路を歩いて街に戻る。気候のせいか疲れも無い、街中の商店路を五路の端から四三二と順に歩いてみる。ロシア人向けな店は街の中心近くに集中していて、おおよそ商店街の6分の1くらい。大型ショッピングモールでは衣料品を中心に家電雑貨。玩具など多品種。


4時間ほど歩く。
招待所に戻って昼寝。


鉄路を挟んで街の反対側を歩く。

国内線列車駅の前は建物も年期が入っていて、ゆったりした田舎の風景。
高級マンションなどの建設ラッシュ••向こう側とは時代が違って見える。
ロシア古建築物なる木造住宅と、風化したレンガの建物が当たり前のように続く。




繁華街の方に戻って、街に沢山あるロシアレストランで夕食を喰う事にする。でもボルシチピロシキくらいしか料理の単語が出てこない。看板のキリル文字でバイカルという名の店に入る。女給さんは空色でシックな衣装。中国語版のメニューが渡される。カタコトの中国語でボルシチとロシアンティーを頼む。メニュー表に「三鮮日本豆腐」という文字を見つけて、「なにコレ??」と訊くと、「あなた中国人じゃないでしょう」と訊かれる、日本人です。と答えたらなにやら納得した様子。助っ人が呼ばれ、小柄なメガネっ子が来ていきなり綺麗な日本語で「これはお豆腐に海老と~が入ったものです」と説明。驚きつつ礼を言うのを忘れる。


周りのテーブルにはロシア人が家族や仲間で食事。自分は独りでボルシチをすする。ロシアンティーはアルミの急須に運ばれ、自分で粉ミルクと砂糖を入れてわびしく飲む。
後ろから現れた男性が日本語で「こちらのテーブルで一緒に食べましょう」と誘われる。この街に駐在している日本人と中国人スタッフの10名ほどのグループで、先ほどのメガネっ子はハルピン出身のスタッフのひとりだった。


ここに日本人旅行者が来るのは珍奇な事らしい。
10年.6年.4年と駐在して最前線で働いてる人達に、料理や酒を薦められる、こちらは遊びで来ているのが申し訳なく、ひたすら恐縮至極。仕事の内容は詮索せずに礼を言って別れる。心からお辞儀をした、それくらいしかできない。