前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

「乞食桃水逸話選」

乞食桃水逸話選(こじきとうすいいつわせん)

乞食桃水逸話選(こじきとうすいいつわせん)

以前から気になっていた江戸初期の禅僧 桃水雲渓(とうすいうんけい)逸話集の現代語訳。定まった寺に安住せず風狂な生き方をした一休と並ぶ逸話の多い禅僧のひとりか、一休は室町時代の仏教界に怒りの塊の様な強烈な批判文を残したり盲目の尼僧と同棲もしているけど、死後に高貴な血筋だとか立証できない逸話が足されているのは不本意な気がする。


弟子が会いたいと探しても桃水は乞食の集団の中に同化して暮らしていたり、馬用の草鞋を編んで細々と生きていたりと、古典の荘子に書かれている様な、普段から庶民の中に居て、朝廷に発見されて高職に仕えるよう請われる度に姿をくらます聖人のエピソードともダブる。
どこまで実話だったのかは分からないけど、乞食生活でも仲間の病気の面倒を見たり、死んだら自ら穴を掘って埋葬したりと集団の中に役割を見出して生きていた。人に聖も俗も、貴も賎もない、それを身を持って示していたのか、そんな意図さえ更々なかったのか。
仏教の悟りすら、最後には拘らない 禅宗の理想のひとつの到達点か。なにも持たなくとも、少なからずあのひとに会いたいと思わせてしまう「才能」があってこその俗世間への埋没だけど。