曹洞宗は朝鮮で何をしたのか
- 作者: 一戸彰晃
- 出版社/メーカー: 皓星社
- 発売日: 2012/08/29
- メディア: 単行本
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曹洞宗の住職である著者が、日本統治前後の朝鮮半島や日本で曹洞宗の肩書を持つた僧侶が何を訴え何をして来たのかを丹念に掘り起こした集大成。
個人的に父方の寺も母方の寺も「曹洞宗」ということもあり、漠然と禅宗、道元としか知識がないものの、重たいタイトルに引き寄せられて読みはじめた。想像以上に漆黒の近現代の記録を突きつけられて圧倒される。無論、満州の講演病というエピソードを引用して曹洞宗だけが大日本帝国と特に強い絆でいたわけでもなく、今現在の著名な日本の仏教宗派が積極的に国策の威光に乗っかっていた事を踏まえつつ、まずは身内のことから襟を正す意味で。
関東大震災の犠牲者慰霊に、朝鮮人を特別視するなという主張や、李氏朝鮮の閔妃暗殺事件に僧侶武田範之が関わっていた事、伊藤博文と曹洞宗の高僧との親交から満州での宗教統制に関わって、安重根による暗殺後には博文寺を建立、しかも安重根の次男を探しだして式典で詫びさせるなど、傲慢ぶりは枚挙にいとまがない。日本統治下での暮らし、敗戦から引き上げまで様々なエピソードが紹介されている。
戦後、曹洞宗は東南アジアなど世界各国で平和に係る奉仕活動をしている。その転機も本書で知る。