前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

音楽嗜好症 ミュージコフィリア 〜脳神経科医と音楽に憑かれた人々

音楽嗜好症(ミュージコフィリア)―脳神経科医と音楽に憑かれた人々

音楽嗜好症(ミュージコフィリア)―脳神経科医と音楽に憑かれた人々

実話を元にした映画「レナードの朝」で知られる脳神経科オリバー・サックスの、音楽に憑かれた人々の症例を短い文章で紹介したエッセイ集。
冒頭の、雷に打たれて臨死体験をした患者が、今まで聴かなかったクラシックピアノに覚醒めて自ら作曲演奏するまでの話は、正直眉唾モノかなと思って読み進めていく(突然、ピアノ曲が好きになり後は本人の努力の結果だと思う)。病気がきっかけで日々頭の中で鳴り響く「音楽幻聴」に困っている人や、音楽を聴いてもノイズか苦痛にしか感じない「失音楽症」から、音楽が鳴るだけで重篤な身体の痙攣を起こす人達の恐ろしい日常・・・投薬で改善したり、年月を経て消えたりもするらしい。重い失語症アルツハイマーでも歌をうたう時だけは、感情表現を込めて歌い。歌い終わるとまた元に戻る患者も居る。生活に支障がある患者でも、過去のエピソード記憶の出だしを再生できれば何十年も昔の歌がうたえるのだという。


飽きっぽい性格もあって昔から、好きな音楽の嗜好は歳と共に変わっていくのかな?と考えていた。
本書の27章【抑制不能ー音楽と側頭葉】P427に前頭側頭認知症を発症した人が、ひっきりなしに口笛を吹くようになり自作の曲も作ったり、以前は嫌いだったポピュラー音楽を何時間も大音量で聴くようになった症例が紹介されている。


28章【病的に音楽好きな人々ー ウイリアムズ症候群】
1万人に1人の割合で生まれる染色体の欠損による先天性の病気、心臓と大動脈の欠損、独特の顔貌(天使のような)、認識力などの知的障害がある。
知的障害といっても彼らの饒舌な言語能力は健常者よりも高く、特に音楽に対する覚えの早さとリズム感、即興で作る才能もみられる。
メロディやビートが気に入ると、3ヶ国語4ヶ国語の歌詞を憶えられる子どももいる。しかし歌詞の意味は知らないだろう・・・なんだか他人事に思えない。


本書の各章に共通して見られるのは、脳の一部の機能が健常者の様に働かない状態になると、本人が望まなくても「音楽」が降りて来て、取り憑かれ、生活すら支配される人達の姿だ。