前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

快楽亭ブラック著【立川談志の正体】愛憎相克的落語家子弟論

立川談志の正体―愛憎相克的落語家師弟論

立川談志の正体―愛憎相克的落語家師弟論

談志が亡くなったニュースを聴いた時から、まず出版するだろうと思った身内からの追悼本の中で、まず先に読んでおこうと。
感想はもう、相変わらず歪んだサービス精神のカタマリに、ひと安心・・・と同時に、この人も談志同様に客の度量を試す様な狂人の芸道を生きてるなぁと。
これまで聴いたブラックの改作落語は良くできている、芝居から映画まで常軌を逸した数の作品を視続けて来たストレスがマグマの様に溜まり、まるでカタキをとるかのように自分のお客だけは満足させようとする。しかし創作の動機は他の演者たちへの罵詈雑言だろう。
とても狭い落語界。その更に狭い人間関係の内輪ネタで、マイナスのサービス精神が爆発する。


Webなどない昭和の終わり頃、テレビ番組も映画も自分が飢えて求めるようなタブーを笑う芸は無かった。そんな中で時々通っていた畳敷きの旧池袋演芸場。客が少なすぎて演者と気まずい雰囲気を醸し出す、演者が自ずと自虐ネタを言う、常連客はクスリとも笑わない、時空が固まる。
上手下手を通り越した贅沢な空間だったと思う。ああ、これが高度成長前の日本に流れていた時間なんだなと感じさせてくれるベテランの古典落語。難しい曲芸を当たり前の様にこなす太神楽。もう存在だけで味のある老いた漫才コンビ


月の31日がある日だけ特別に行われた余一会、別名は放送禁止落語会。この時だけ客の数と熱気が違っていた。
世の中のくだらない自主規制へわざと正面衝突する様な快楽亭セックス(師匠の談志が志ん生の改名記録を塗り替えるよう仕組んでいた)の高座は本当に楽しかった。