前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

自転車で走れ希望の道〜ベトナム・枯葉剤がまかれた村で

BS世界のドキュメンタリー シリーズ アジアに生きる子どもたち
『自転車で走れ希望の道 ベトナム枯葉剤がまかれた村で』 2008年制作 NHKエデュケーショナル えふぶんの壱 
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ベトナム戦争当時、親が受けた米軍の枯葉剤の影響で、下のふたりの兄弟ミン君(15歳)トゥアン君(12歳)は右足が生まれつき萎縮している。なのに松葉杖で用水路を飛び越えたり、ヤシの木に登ったり、自転車こいだり、日常を当たり前のようにこなしている。しかし歩行訓練のために学校が遅れたため4歳下の小さい子と同じ教室で一緒に学んでいる。
トゥアン君はパソコン教室まで中古の自転車を夢中で片足こいで行く。炎天下、27キロ先!遠いぞ!
パソコンを無料で教えてくれる先生は生まれつき両腕が萎縮している男性。最近生まれた彼の赤ん坊も同じ症状で生まれていた。


新しい義足を作ってもらうために兄弟ふたりは母親と共に首都ホーチミンへバスで行く。
ツーヅー病院にある枯葉剤障害児支援施設の平和村には、彼らの仲間、枯葉剤の影響で重い障害の子どもたちが暮している。
ヒトの形を変えてしまうほど強力な毒物残留と遺伝の深刻さが映像で伝わる。一度見たら一生忘れられない。
いや、彼ら兄弟を案内役としてここの現状を伝えるために番組が作られたのかな?
だとしたら脱帽。





あらためて枯葉剤を撒いた当事者たちの罪を考える。沖縄の米軍基地からもベトナムへ飛んでいたはずなので、同盟国日本も共犯だろう。枯葉剤を製造していたモンサント社は、遺伝子組み換え作物と(枯葉剤とたいして変わらぬ)農薬の販売などで世界市場を席巻している。米国は今も枯葉剤と後遺症の因果関係を認めていない。原爆症も認めていない。
このまま日米関係を『深化』するとかで不安が募る。


第一次世界大戦後の負傷兵たちを写真に収めたドイツの反戦博物館(ナチスに一度壊されている)のコレクションから編集された写真集『戦争に反対する戦争 』を思い出す。爆発の衝撃で顔面が上にめくれている、あるいは顔の下半分が吹き飛ばされて空洞になっている、『戦争の悲惨さ』を言葉にするより一目瞭然の。人は思うようには簡単に死なないし殺せない。そして重い後遺症にずっと苦しみ生きていく。