前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

宣教師ニコライと明治日本

宣教師ニコライと明治日本 (岩波新書)

宣教師ニコライと明治日本 (岩波新書)

幕末から来日して日本語を深く習得し、(各地のお国訛り、古事記から講談本まで読み込み。)ロシア正教を広く布教したニコライ大主教、約40年分の日記からの抜粋。
著者の特徴ある見方として、ニコライが日本各地で出会った土着の信仰心とロシア正教の親和性を日記から読み解いている。
西欧化していく日本人にはロシア正教よりもプロテスタントが向いているのではないか?という迷いまで日記に書かれているのも、未来からは面白い。同じキリスト者でありながら、ロシアを軽蔑している欧米の宣教師たちの態度も生々しく伝わる。


晩年に起きる日露戦争での日記の抜粋は痛々しい。松山や豊橋のロシア人捕虜たちの面倒を細かく指示しながら、無数の個人間の手紙のやり取りに明け暮れる。祖国の敗北が濃厚になり、少年時代から知っているマカーロフ提督の戦死が伝わる。彼はニコライ堂こと大聖堂の建設のためロシア国内の資金集めに尽力してくれた恩人だった。

東京 神田駿河台 日本ハリストス正教復活大聖堂


日比谷焼打ち事件では暴徒化した集団が官庁や新聞社に放火し破壊しながらニコライ堂にも迫る。急遽、近衛兵が護衛について救われている。


日露戦争中には日・英の宗教代表者から、ロシア人は白い肌に黄色い心を隠している、日本人はその逆で・・・などと揶揄されている。●●肌に〇〇心〜という表現が、百年前から流行ってのにも驚くけど、日本人の多くに存在する自称・名誉白人級の感違いは、どうにも根深い。ニコライの日記を通して西洋・スラブ・日本の三点観測の明治が見える。