前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

ルポ最底辺 不安定就労と野宿

ルポ 最底辺―不安定就労と野宿 (ちくま新書)

ルポ 最底辺―不安定就労と野宿 (ちくま新書)

著者は20年近くも野宿者へのボランティアと同時に日雇い労働で生活費を稼いで来た,自身の体験を交えて語るルポ。危険な現場で使い捨て同然に扱われた日雇い労働者と野宿者、病気や怪我をして行政に救済されないまま路上で死ぬ人々。深夜に少年たちに暴行され殺される老人たち、野宿者を半ば軟禁して生活保護費を掠め取る連中。近年問題になっている派遣労働の実態まで。


2007年8月出版後から複数のブログで優れた紹介文や同感する感想がweb上にある。


監視カメラがドヤ街を囲み、犯罪行為は無視して他でもない労務者とボランティアの動きを追っていると著者は主張する。その外側には警察と福祉事務所と地元病院の無視の壁。



著者はパターン化はできないと断りながらも日雇い労働者や野宿者を、不器用なくらい馬鹿正直に働いて生きている人々として個々の暮らしを紹介している。確かに世間に蔓延する愚か者的な偏見を覆すには必要な寄り方だとは思う。
裁判傍聴記などでも、不器用な高齢者や軽度の知的障害と思われる人々が、生活保護を頑なに断ってまで刑務所に行くほうが人としてマシだと思い込んで、わざと捕まるケースを幾つも聞くので。
彼らの失態を冷笑したまま、説得すらできてないワレワレ側の方だって不細工で愚鈍なのだが。


要は保身だけで機能しない行政は変えないと、ボランティアは疲弊していく。
ワーキングプアとかロスジェネとかの騙りは、広告代理店やらメディアか社会学者のバブリーな食い物、と思いを強くする。