前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

チベット2作品 風の馬/雪の下の炎

「風の馬」(1998年製作 米)
チベットの今を描いた劇映画。見終わってから十年前に作られていた事に気づく。それくらい今のチベットの切迫した事実を群像ドラマに容れている傑作。
●渋谷アップリンクで上映中
http://www.uplink.co.jp/x/log/002949.php


聖都ラサ、街頭の監視カメラ。
職も無く日々クサる青年たち。
ダライラマの写真を飾ることも祈りの言葉さえ禁じられる僧侶。
中国共産党を讃える歌でデビューさせられるチベット人歌手。
中国当局の下でチベット人の公安が同じ民族を拷問するジレンマ、
近所の意外な密通者、
ノンキなチベット好き外人旅行者(自分を含む)、

ドラマとして観るにはどれも現実味が濃い。
素人の自分にもこの作品が作り上げられる過程で、どこまで描写すべきかカンカンガクガクがあった事は想像できる。絵柄はテレビドラマ的ではあるけど、チベット人の現状を何も知らない多くの中国人にも見て欲しいし、それに充分耐えられると思う作品。
「セブンイヤーズ・イン・チベット」のような善悪を単純化した描写は無い。それだけ観客には重たい問い掛けが来る。


この上映の前に見たドキュメンタリー「雪の下の炎」(2008年製作 米・日) 
33年間も中国当局に捕らわれていたチベット人の老僧が、釈放後に獄中亡くなった人々の為にチベット支援運動に参加する。当時自分を殴り蹴り拷問した人間にまで(手加減すると上官に責められるだろう)と淡々と語る場面が妙に「風の馬」と重なる。やりきれない心遣いを引き摺る。