前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

植民地期満洲の宗教

日中両国の視点から語る植民地期満洲の宗教

日中両国の視点から語る植民地期満洲の宗教

複数の研究者による旧満州の仏教団体を中心とした日中共同研究、論文集。学術書ながら素人の自分にも読みやすい。以前から読み散らかしてきた満洲関連本での疑問がいくつか解かれつつ、新たに気になる名が増えてしまう。

明治から朝鮮半島中国大陸やロシア領に進出した真言大谷派 本願寺派の布教出張所。現地の情報収集や従軍僧としても役割を果たしている。禅宗曹洞宗や内地で活動制限のあった新興宗教天理教なども大陸へ渡り、中国人への布教をするも、獲得した信者はほとんど在留邦人だった模様。
満州国の回教工作のなかでは川村乙麻/川村狂堂の名があがる、満州国回教協会の総裁として日本が占領していた各省の管轄、とはいえ実際の影響力はどうなのか。資料が少ないせいかモンゴル人社会への懐柔も記述が少ない。


満州族が住む東北中国から北方の宗教には自然崇拝の薩満(中国語読みでシャーマンの当て字)信仰がある。
隣接する西のモンゴルはラマ教(チベット仏教)の影響が大きい。シャーマンとラマ僧との仲介役に莱青(Laiqin)という存在についてp332に書かれている。莱青は跳神の時に甲冑を着てラマ教の経典を念誦し、神が降りる時の動作が薩満と違い、ラマ教の『跳布扎』に近似する。とのこと。今も実在するか知りたいところ。


巻末の資料編で満洲当時の神社リストが載っている。とはいえ8千円台のお高い本なので、WEB上で調べたい場合は神奈川大学21世紀COEプログラムの海外神社(跡地)データベースで一部写真や図面も閲覧可能。