前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

中国を追われたウイグル人

拷問を告発するアムネスティ白書みたいなものかな?と構えつつ、この安価な新書を読みはじめて、内容の濃さ重さに埋まる。
元女性実業家、外科医、テレビタレントで俳優、日本に留学中だった東大大学院生、紹介されているウイグル人それぞれの冤罪。
1997年に起きたウイグル自治区北西の街グルジャ/イリ(伊利)で起きたウイグル人集団デモと鎮圧の詳細を、当時事件に巻き込まれて拷問されその後ドイツに政治亡命した被害者に取材して訊いている。イリ事件・・・少しは知られてても日本の媒体で事件の内容を今まで読んだ事がなかった。


ウイグル自治区中国当局にテロリスト容疑をかけられたウイグル人は、役職や性別にかかわらず死ぬまで拷問を受け続ける運命にに襲われる。陸路で中央アジアに逃げても、ロシア・中国・中央アジア各国で容疑者を引き渡す条約、上海協力機構が彼らを脅かす。選択なしで多くがパキスタンアフガニスタンへ向かわせた事を知る。そこでアメリカ軍に爆撃されたうえ村人に懸賞金付きタリバンとして身柄を売られていた。グアンタナモ基地へ収監され尋問の日々、ようやく五名が釈放されるも中国送還だけは避け、現在は引き受け先のアルバニアで現在難民として暮しているところへ取材。
ここまで酷い境遇は想像を超える。この本で証言しているウイグル人に限っては、『同じイスラム教徒としてアフガンで聖戦に参加』してたよな安直な物語は無かった。


イリ事件の詳細・ロプノールよりもコルラ寄りという馬蘭核実験場と近隣住民への健康被害・亡命者の受け容れ先や活動など。東トルキスタン亡命政府の経緯と消滅、世界ウイグル会議の活動の一端をこの本で知ることができた。




出版大国日本でチベット関連本は多いけど、紀行モノ以外で現代ウイグルをあつかう一般書籍はとても少ない。旅から帰ってから、現地で感じた無知を埋めよう・調べようとする度に痛感する。
今年は特に日本国内の大手マスコミは北京オリンピック運営と中国政府に配慮して、新華社のニュースそのまんま流していた。新疆でナイフを所持してたテロリスト集団を逮捕。など〜ウイグルナイフは伝統的な身だしなみだぞ。と独り言を吐いては無力感。