前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

「ソクーロフの」昭和天皇

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太陽 Солнце
映画を視る前に個人の中に在るコナレた「物語」を投影して視てしまう感じ。クドく言い直すと真偽を問わず巷に溢れる昭和天皇関連本や映像資料を、作品に組み込んで作った過程をナゾって視る自己嫌悪。
ソクーロフ昭和天皇イメージで作られた映画でも、昭和天皇に親しみを持っている人々には神格化された自己と、戦争の犠牲者に苦悩する天皇に映るだろうし、裕仁に戦争責任が在ると確信している人々には、無責任で優柔不断な道化に映るだろう。


イッセー尾形昭和天皇は素晴らしい怪演というよりも奇演に近い。クセをデフォルメした結果に感じるのは病的で神経質な一本調子。この感想もこの役者の芸が好きか嫌いかによって変わる。


一部の幻想的な表現よりも長廻しのカメラが重たい動かない空気に感じ、ハリウッド型娯楽映画に脳を侵された一般の患者としては、視てて苦しい間が多い。必要最小限の処しかCGを使わないのは好感が持てた。
国際的な映画賞を獲ったとはいえ、この作品は一般大衆向けではないと思う。


2005年作品で2006年日本公開前にはマスコミを通して何度も上映中止の憶測が流れた。ロシア人監督が敗戦前後の昭和天皇を描いた事への反感・抵抗感や勝手な自主規制が強かったように思う。おかげで海外や国内マスコミ向け試写で視た方々の細かい内容の記述が極秘情報に思えて、映画を視るより先に読み込んでしまった。
こういう意味での話題作は事前情報が多過ぎて、結果劇場に行く気が萎えるし、映画批評の意味も違って難しい。