前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

台湾基隆中学「Fマン」事件

台湾人と日本人―基隆中学「Fマン」事件

台湾人と日本人―基隆中学「Fマン」事件

真珠湾攻撃から間もない昭和17年、台湾北部の港町基隆(キールン)中学校、卒業間近に台湾人生徒が特高に連行された謎の事件、半世紀前の同窓生たちを探し訪ね歩くルポ。
日本人が八割、台湾人が二割という学校。卒業記念のスケッチブックを台湾人生徒だけで回していた事を不審に思った日本人生徒達が彼らを集団でリンチ、教師から特高に通報が行った時には誰かに操られた台湾独立運動などという「大罪」が創られていた。


植民地での憲兵隊と特高警察VS被害者の台湾人中学生たち、どれだけ悲惨な事件なのかと読む前から気が重かったけど、単純な構図でもないのが興味深かった。日本人側は学校生活は平等だったと言い、台湾人側は日本人生徒や教師が日頃から制裁と称して台湾人を殴っていたという。同じクラスの日本人と台湾人、個々の記憶の落差が凄すぎて色んな意味で呆れてしまう。今や老人の元生徒たちが語る、当時の名物先生や特高警察官の所作は単なる悪役ではなく人間臭い弱さもあり。


スケッチブックに書かれていた問題の文章すら、各人の言う事が違っているけど、はっきりしているのは日本人側が今も仲間内では笑い話で通している事だった。