前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

カムチャツカ トナカイ遊牧民

トナカイ遊牧民、循環のフィロソフィー

トナカイ遊牧民、循環のフィロソフィー

トナカイ遊牧を中心に生活するコリヤーク人の村での2度の遠征調査(93年・95年)をまとめたもの。
希少な内容も7500円と高価なので図書館で借りて読む。


本タイトル通りトナカイに関連した祭りのサイクルが紹介されている。世界観の中心には太陽・火とワタリガラスが重要な役、広く東アジアで一般的な神話かもしれない。キルウェイの祭礼は、途中で取材拒否を受けるが映像がなくとも臭うよなライブ感が伝わる。極地に住む民族はなぜここまで祈りにエネルギーを使うのか。
子供の名付けでは、亡くなった親族から選ぶ。10回の生まれ変わりを信じているという。名付けを間違えると病気の元になる。
葬儀での記録が興味深い。むこうの世界も同じものが必要というイメージを持っていて、故人のお気に入りの犬を殺す・天上界へ送る。トナカイの毛皮を二重に遺体に被せ、腹にナイフを入れる。参列者が遺体を足で蹴る。火葬の横で相撲を取ったり、鞠遊びをしたり。死者は天上へ行くとされるので埋葬はしない。


二度とも僻地でのロシア人研究者との合同調査は、日本人研究者とロシア人との現地での調査法の違い、歴史的なロシアへの不信感からくる感情など、宗教世界に踏み込んだ聴き取り方が出来るのは、日本人が親近感を持たれている証のよう。
コルホーズソフホーズ導入での生活の変化はおおよそ口承で語られる。終章にソ連崩壊後の経済的な孤立、失われた世代についても紹介されている。