大正文化 帝国のユートピア
大正文化 帝国のユートピア―世界史の転換期と大衆消費社会の形成
- 作者: 竹村民郎
- 出版社/メーカー: 三元社
- 発売日: 2004/02/01
- メディア: 単行本
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今から90年も昔にすでに都会での暮らしが確立されている事に驚かされる。通勤ラッシュ・大衆誌の購読・デパートで買い物・演劇、活動写真・野球観戦・夜の歓楽街・郊外レジャーからカルチャースクールまで。
大阪毎日新聞社主催の婦人社会見学は驚き。軍の施設へご婦人達を招いて当時は最先端の戦車や潜水艦を披露、乗船までさせている。
軍の意図は第一次世界大戦でのヨーロッパの国家総動員体制へのアバウトな啓蒙とのこと、当時は陸軍大臣が田中義一。確かにこれは国防婦人会の前段階になるような試み。
当時のキリスト教信者を中心とした壮絶な廃娼運動と占領地での『からゆきさん』の相関関係や推移も、引き続き著者の本を読まないといけない様な巧妙な書き方で、してやられたり。
世の男達へ向けて怪しげな性病治療薬を大々的に広告して売り儲けたという、有田ドラッグ商会についての記述は生々しい。(専売所のショーウインドウには背景を黒幕で囲い、梅毒・淋病に犯された男女・胎児の蝋製模型を飾って、新聞広告では皇室中心主義や家族主義を鼓吹する文章を一緒に載せていた)
脅迫と愛国心は定番のセット商法とはいえ、模型の横に天皇の写真を置くなんてブラックジョークかと思う。