前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

インドの時代

インドの時代 豊かさと苦悩の幕開け
「インドの時代 豊かさと苦悩の幕開け」
中島岳志 著  2006年 新潮社刊


ライフスタイル・消費行動・映画・宗教〜 新しいインドの変化と混乱と伝統を多方面から紹介する。
ニューリッチ層の西欧化嗜好と癒やしブーム、広がるナショナリズムと宗教の広告戦略、逆輸入される活発な新興宗教や人気の聖者など。まあデカイ国の集合体だから紹介しきれないのは当然だ。


91年から始まったインド市場経済の自由化政策の動きは、近隣の湾岸戦争で受けた複合的な影響と経済危機から選択なしの決断だった事情など。こんな基本的なことを知らなかったっ。


p126に紹介されている、誰かのお供え物ひとつから自然発生的に大きくなって行く歩道寺院という存在は面白い。政府の都市整備計画にともなう住宅の強制撤去に対抗する守り神の機能を果たしているそう。


神話のテレビドラマと社会現象から便乗した?過激な政治運動なども紹介されている。個人的にヒンディー映画の大作は好きだけど、まいど愛国心のイレコミ方には異常性を感じてしまう。【インド人かくあるべし】みたいな盛り上げ方が外人として居心地悪い。この本で紹介されているアメリカ在住の裕福なインド人が最終的に故郷へ帰るドラマにも、似たような匂いがする。


マザー・テレサへのインド国内での意外な評価も書かれているけど、自分には批判的な意見が理解できる。ヒンドゥー教の死生観を知ろうともせずに、死を待つまで患者を閉じ込め隔離するやり方とか、常に海外では貧困・不幸の救済としてインドが映される時に感じる国民感情を思えば不快になるのも当然だろう。マザーテレサの故郷マケドニアも国民の暮らしは長年困窮していると聞く。




インドの今を読みながら意識が分離して横に広がっていく。
二度目にインドへ行った94年夏、二ヶ月ぶりに日本に帰ったらテレビCMにターバンを巻いたインド人役がカレー商品に出演していた。ステレオタイプ・・・発想が幼稚すぎて腹が立った。
日本国内で普通に流れる国際ニュースは米国発ばかり、日本はおおよそ米国の間接統治下だから「世界発」も自国のニュースと言えなくもない。東京発の国内ニュースを地方のローカルニュースと思えば、間抜けな見出しも腑に落ちるし。