前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

パレスチナ・ナウ―戦争・映画・人間
パレスチナ・ナウ 《戦争/映画/人間》 四方田犬彦:著



おもにアラブ映画祭などで視た作品群の解説を中心に読む。長編ドキュメンタリ【ルート181】で感じたイスラエルの混沌も含めて、レアな建国初期のイスラエル映画を同時代に作られたナチスの映画や満映の開拓募集映画に繋げていくところなど興味深い。


1964年制作で当時の人口の約半分、118万人が観た大ヒット映画【サーラ・シャバッティ】は、最近のドキュメンタリー映画でも言及されていた。ステレオタイプなアラブ系移民(ミズラーヒム)の一家が巻き起こすコメディ映画の詳しい内容を知る。


ドキュメンタリー【アルナの子どもたち】と、【パラダイス・ナウ】に共通する、殉教(自爆テロなど犯行)前に撮る遺言ビデオのシーンでの違い、映画のテーマは似ているようで180度違う作品なのかと思う。どちらも詳しい内容が親切に書かれているので、これから観たい人は観終わってから読むことをお薦め。


映画市場の問題もあるけどその国で観客がほとんど観ていない文芸作が海外の映画祭で上映され、映画好き・インテリにその国の代表映画として鑑賞・批評されるという現状は、自分も端っこで観ていながら居心地の悪い思いをしている。著者が現地の大学資料内でイスラエル国内の映画館でヒットした過去の娯楽作品を頼んでもなかなか観せてもらえなかったエピソードも面白い。70年代にヒットしたそのシリーズの内容は『どっきりカメラ』のイスラエル映画版だったという。うへぇ。


■後記■ この本に載っているパレスチナ人俳優モハメド・バクリへのインタビューを、後日デモクラシー・ナウ!の映像インタビューと繋げて視る。