前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

海を渡った日本語―植民地の「国語」の時間

海を渡った日本語―植民地の「国語」の時間


「海を渡った日本語」は当時の文献と個人の回想録など重ねて読み解く、植民地『日本語教育』事情。沖縄と北海道での「皇民」化政策と関係者の経緯も追っている、台湾・シンガポール・フィリピン・朝鮮・旧満州各地での事情と対比もあって欲張りなところ。朝鮮では国語があるところへ「国語」を強要した恨みが大きい。台湾では当時の原住民の少年少女を皇民化した一方で、祖父祖母の世代と子や孫が違う言葉を話す断絶の今を造っている。明治末から細々と始まったアイヌの旧土人学校も、実は現地に「左遷」された教師が村の雑務に追われて、子供の教育どころではない内情もあり。


植民地を日本化する素材は、明治からの天皇崇拝と国語としての「日本語」しかなかった、という実態を痛感する。当時の現地民を語る日本人の記述は、善悪混同で現在に続いている。「人間らしい文明を教えてあげる」「滅び行く民族への哀悼」巷の今のご意見と、変わってないなあというのが自分の情動に寄った感想、それだけに断絶した遠い昔とは思えない。