前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

重慶の恩義

konton2005-08-28

五時半、ひとの呼び声で目を覚ます。下宿屋並の夜中の音楽にも熟睡していた。下に降りると7時発の重慶行きバスが出るという。車掌のおねえさんに「この日本人は夕べ間違えてここへ来たから面倒見てやって」的な身請けがあって恐縮。昨夜会った宿の従業員の青年が是非文通してくれと言ってくる。日本人のオジサンと文通とはここにも閉塞感を感じているのか。


大きな街なので判りやすい貧困らしさは見られなかったが、バスが走り出して郊外へ出ると「一人輸出(出稼ぎ)で家族は貧困脱出」看板を見る。日本の山間部と変わらない風景なのに・・・。


途中に街が幾つもあり、その郊外から乗って来た青年が自分の隣に座る。新学期に重慶の大学に戻るY君。車内で梨を皮を剥いてまでもらったりして恐縮、これから先は長江を下って長沙へ行くと筆談交じりで伝えたところ、バスが昼に曇天と小雨の重慶に着いてからも、バスターミナルから重慶フェリーターミナルまで人に訊きながら連れて行ってくれた。ようやく二等遊覧チケットを買ってひと段落。昼飯食おうという誘いで近くの食堂で4〜5品も頼んで食う。下手な中国語で雑談、便りを送るから住所を書いてくれと頼んで大学付の住所を書いてもらう。お会計時に心配は当たって、誘った方のY君が自分が払うからと頑として譲らず、歳が倍近くも違う青年におごってもらう。最近では中国でも割り勘を「AA制」と言って少しは認知されているようだけど、アジアではまだまだ割り勘は非常識。


出航まで時間があり、それまでの待合室まで探してくれ、別れ間際には船で食えよと大量のお菓子の差し入れ。書籍に挟んでいた恐らく親からの学費を食堂で払っていた瞬間が重なって申し訳なくなる。感謝を通り越してなんという迷惑千万な旅人なのかと。


Y君が去ってから、ひとり我に返る。広い待合室では子ども達がはしゃぎ廻っては母親に叱られている。一人っ子政策といいながら群れて遊ぶのが上手い。こうして子どもが遊ぶ姿を自然にボンヤリ見ていても咎めもない国。本来それが普通なのだけど日本では既に無理だろうなと。他人への根本的な懐疑はいわゆる先進国の住人こそ病的だろう。