前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

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除染された故郷へ 〜ビキニ核実験 半世紀後の現実

NHK BSドキュメンタリーWAVEで放送された「除染された故郷へ 〜ビキニ核実験 半世紀後の現実」を視返す。番組制作に協力し長年現地の取材を続けているフォトジャーナリスト島田興生さんのスライドトーク夢の島にある第五福竜丸展示館で聴いてきたので。


マーシャル諸島ビキニ環礁から東に170キロ先のロンゲラップ島も米軍の核実験で放射能汚染を受けた。島民たちを診た医師たちは患者を名前ではなく識別番号をつけて、島民の健康被害を長期に調べていく。核実験終了から数年後に米国が島の安全宣言をし島民たちへ帰島を促す。しかし前年に記された公文書には島の汚染は収まっておらず、放射能の影響を調べるために島民たちを帰したことが後年明らかになる。帰島したひとたちや被爆せず初めて島に住んだ人にも健康被害が起きる、若者の甲状腺癌、妊婦の死産や奇形児出産。足が肥大する病気など。島民たちを診療する米国の医者たちは、データを取るだけで具体的な治療はほとんどしなかったという。集団移住を決めた85年に環境保護団体の船で南のメジャト島へ移る。年を経るにつれ老人たちの望郷の念が強くなり、米国内務省が除染事業の予算を認め、ロンゲラップ島の除染作業を2001年から開始、2012年の今年になって除染は充分だとして帰島が島の村長らが呼びかけはじめている。実際は居住区予定地の狭い範囲しか除染していない。一方で安全宣言が妥当だとする科学者も取材に応じている。首都の島で暮らす元島民たちは3ヶ月に一度米国からの援助をもらって暮らしている、帰島しないと援助をやめると圧力が係っているのだと言う島民の話も。


悩む元島民たち、老人たちは故郷の島で死にたいと言い、でも孫に島の食べ物を食べさせたくないとも言う。子育て世代は子どもの健康が心配だという。
島民たちと親しい島田さんが撮影した子どもたちの写真を見ると、これから長く続く人体への影響は想像を超える。そして米国は治療もせずに何世代もデータだけ採り続けるつもりなのか。


東京電力福島第一原発事故の後では、遠い南の島の悲劇ですねと簡単に切り離せない。国内の被害者に日本の行政機関は米国の前例を真似るつもりなのか。