前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

放射能を浴びたX年後

劇場映画 「X年後」公式サイト http://x311.info/


ポレポレ東中野で視た、1956年米軍が南太平洋のビキニ周辺で5度の水爆を爆発させた実験で、第五福竜丸以外にも多くの遠洋漁船と漁民が被曝していた。米国原子力委員会の機密文書が期限を過ぎて情報開示で一部データが公開され、日本や北米を含めた環太平洋の国々を覆った放射能汚染の規模に愕然とする。


自分が観に行った日は観客が少なかったけど、上映後に監督とプロデューサーの話を聴けて非常に得をした気分で映画館を出た。
久しぶりにブログに要約を書こうかと思ったら、公式サイトとパンフレットにも書いてあった「カトリック中央協議会・広報推薦文」が自分の印象と感想に極めて近い。当時の暮らしを仕方がないと肯定する「石炭と魚」は311後の「原発と経済危機噺」と変わらない系譜なのか。当時、汚染された魚が検査もされず家庭の食卓に出て食べられていたとは、生まれるずっと前からこの国の空放射能汚染に覆われた日があったとは。


以下は映画公式サイトから無断記載。

カトリック中央協議会・広報推薦

≪推薦理由≫

東日本大震災」による福島第一原発放射能事故から1年半。
深刻な健康被害、環境汚染、被災地住民への言われなき差別は、いまだ終息のきざしすら見えず、
被災者を先の見えない苦しみに突き落としている。この甚大な放射能汚染に遡ること57年前の1954年。
南海のビキニ環礁で、アメリカによる水爆実験が5回にわたり行なわれた。

これについては第五福竜丸の被ばくが有名だが、ほとんど知られていないもう一つの被ばくがあった。
この海域で何も知らず操業していたマグロ漁船や貨物船の乗組員が「死の灰」を大量に浴びていたのだ。
本作品は高知県を拠点に、歴史の闇に埋もれていたまぐろ漁船員の被ばくの実態を調査してきた
高校教師と生徒たちの活動を知った南海放送のテレビマンが、8年にわたって過去の放射能被害と
関係者のその後、日米両政府の間で交された「機密文書」を掘り起こして検証した、驚くべき歴史の真相である。
死の灰」を浴びた働き盛りの海の男たちが、40代、50代の若さでガンや心臓疾患によって次々に亡くなっていく。
焼き場で夫の遺骨を拾った妻の証言、「他の人の骨はすっきり残っちょるけん、うちのお父さんのは
ぐちゃぐちゃになっとった」には戦慄を覚える。

こうした恐るべき放射線被害に対してアメリカは、200万ドルの賠償金で日本政府を黙らせる。
漁業組合に渡された見舞金も「まぐろの町・高知」の漁業振興のために使われ、遺族のもとには入らなかったという。
そして汚染されたマグロが堂々と日本の家庭の食卓に上り続けていたという驚愕の事実。なぜ声を挙げなかったのか。
「あんたら今、こんな時代じゃけんそんなことを言えるが、(当時)ひとことでも言ったらここでは生きていけんじゃった。
あん時代、日本は石炭とさかなで立て直すほかなかったけん」、敗戦後まだ9年、「日本が(赤ん坊のように)やっと
かまり立ちした頃じゃけん(何も言えなかった)」、「いっつの時代も損をするのは弱い者ばっかりよ」。
夫を亡くした妻たちのこれらの言葉は、現代の評論家先生の「高説」よりはるかに正鵠(せいこく)を突く。

ささやかな幸せや安全な自然環境より、経済や効率、スピードを最優先するその構図は、福島第一原発放射能汚染に
呻吟する福島の人々の苦しみとオーバーラップする。腰を据えて日本の座標軸を構築しなければならない今、
本作品はその基礎資料ともなる必見の映画である。

以上の理由から、ドキュメンタリー映画放射線を浴びた『X年後』」をカトリック中央協議会・広報として推薦します。


ローカルTV局の南海放送は良い仕事をしている。日本テレビ系で深夜放送のNNNドキュメントに理解あるスポンサーが付いて早い時間帯で「ETV特集」並の1時間枠で放送できたら、民報テレビの存在もあるのだが。