前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

韓国の軍事文化とジェンダー

韓国の軍事文化とジェンダー

韓国の軍事文化とジェンダー

90年代まで徴兵制の軍隊は当然とされた韓国社会の「軍事文化」と、80年代の民主化運動で語られてこなかった女性からの視点。


日本の長い占領後に独立した韓国では、強い国家建設、民族への愛と徴兵制が当然で是非すら問われなかった。
 北朝鮮との休戦体制下70年代までの反共キャンペーンでは学校教育から農村の婦人団体中心のセマウル運動まで、恐怖と団結を煽った軍事政権。子供時代を過ごした世代が80年代からの民主化運動を担い、90年代末から現在まで政治勢力として活躍するようになる。


80年代に学生運動に加わった女性活動家のインタビューの章や時代背景の解説から、男性中心のデモと武装闘争も女性の役割は後方支援、当時の女性活動家たちは女性問題を提起しないことを美徳とした。戦争下の銃後の守りに似た精神的に圧迫されていた背景もあり。
 光州事件以降の市民運動の伝説と戦闘化の広がりなど当時の流れの一端を知る。
権力側の戦闘警察VS運動家の指揮する過激な武装闘争、火炎瓶と自家製爆弾が使われるようになり、「あいまい」な平和主義は支持されなかった。


80年代に日本でもテレビニュースで流れていた、市街戦のような過激な映像を覚えている人も多いはず。今思うとちゃんとしたニュース解説はされていなかった気がする。


軍隊内で語られなかった男同士の性暴力についても短い章で、複数の加害者への面談、被害者の声を拾っての言及あり。
淡々とした資料と証言と実証のぶ厚さ。ジェンダー関連本でいつも心理的に退いてしまう私怨が感じられない。と思ったら訳者あとがきで紹介されている著者の壮絶な経歴に驚かされた。