前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

眉屋私記

眉屋私記 (1984年)上野英信 著
沖縄名護の北に眉屋と代々呼ばれた一族のなかで、メキシコ移民からキューバで没した山入端萬栄(やまのは まんえい)と、妹のツルの長い半生の記録。
小説のような書き方には、あとがきを読んで訳を知る。萬栄の遺した手記とツルの証言の二つを元に膨大な調査と取材で書かれている。
兄弟姉妹の生きた明治・大正・昭和という奇怪な時代、20世紀初頭のメキシコ〜キューバ 変わりゆく沖縄・大阪・東京という土地、沖縄が大和化され、内地の人間が沖縄人を侮蔑している様子も伝わる。
太平洋戦争末期、沖縄本土決戦の追い詰められたなかで遂にアメリカ兵に出会う場面、萬栄の老いた母がキューバで暮らしている萬栄家族の写真を米兵に見せて、キューバアメリカ=アメリカ兵=息子の知り合いと思い込んで無邪気に喜ぶ場面など、どう表現していいか分らない感覚をおぼえる。


この本を読むきっかけになったドキュメンタリー『サルサとチャンプルー』キューバの松島で100歳を迎えた一世最後の老人は収容所時代に萬栄と同室だった事を知る。敵性国民にあたる日独伊の成人男子のみ収容されたはずなのに、萬栄の妻はドイツ人だったせいか、母娘まで収容所に入れられていた。


錯綜する縦糸と横糸。