前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

シルクロードの光と影

シルクロードの光と影
シルクロードの光と影 野口信彦 著 めこん2007年刊
ウイグルを何度も旅している方の紀行とルポ。表紙はホータンの東300キロにあるケリアで撮られた老女の写真。飾り帽子が珍しい。背表紙の御長寿老人の写真には・・・チョット退く。
内容は本のタイトル通り、過去の旅と2006年とのウイグル各地での変化が書かれていて色々思わせる。トルファンの有名な観光地のひとつ高昌故城(カラ・ホージャ)では、農民から政府が1983年に農地を安く買い上げていた具体的な話を聞いている。最近では北京の新興企業がシルクロード各地の観光地の土地を買いあさって、(カシュガルにある旧市街の趣きある)古道の一部まで買い占めて、入り口にゲートを作り入場料を取るようになっている、と記されている。中国国内でも富裕層の観光熱と投資が止まらない様子が伝わる。ウイグル人たちの暮らし・仕事・学校教育の落ち込みも、奥地へ入っては話を聞いている。


自分達が行った2005年夏の旅でも、有名なバザールは街の再開発で巨大なショッピングモールへ変貌していた。道路は過去に比べて格段に好くなっていた、それはウイグル人の暮らしを向上しようとしたわけではなく、膨大な天然資源を東の中国工業地帯へ送るため整備されたもの。そこへ工場の自動化ラインのように大量の観光客が流れる。
彼らに『少数民族』という言葉を使わないようにしている、と書かれた著者の配慮も伝わる。観光地の施設やみやげ物屋であら探しするよりも、異文化に理解をしめすとかいう根本を、疑ってもみる。