前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

お母さん 帰ってきて 〜中国・出稼ぎ村の子どもたち〜

110分とたっぷり枠のハイビジョン特集を録画で視る。
安直な泣かせる番組になっていない。視た後に長々と考えこませる。ファミリー物は苦手だけど、二年前の長距離バス乗り継ぎ旅で見た、乗客の泣き別れや再会の顔をいくつか思い出す。


四川省にある出稼ぎ村の小学校(900人規模)寄宿舎で暮す子どもたちの暮らしを、旧正月春節明けまで取材した作品。親と離れて暮す様々な境遇の子供たちと3つの家庭、寄宿舎の暮らしがきめ細かく写されている。親代わりの先生の役割なども過積載トラック並み。


ひとりの転校生の事情で判ったのは、上海などの出稼ぎ先に子供を一緒に連れて行くと、戸籍が地方出身者の場合は都市部の学費が高過ぎて、ひとり故郷の小学校の寄宿舎へ預けるケースがあること。出来上がったばかりの寄宿舎も収容人数を超えてしまって二段ベッドに四人が寝ているし、洗顔・炊飯と何をするにも大混雑。学校に通学できる近さに住む児童も、親類の家で農作業から育児までを手伝いながら、居させてもらっている感じ。子どもは忙しい雑務をこなしながらも「捨てられたのかな」「電話をかけて仕事の邪魔をしちゃいけない」と自問自答を繰り返している。そんなインタビューに答える様子は小学生とは思えぬ思索と孤独の深さで、テレビを視てる自分の幼稚さを突かれる。



■週末だけ祖母と暮す姉妹の児童は3年も両親と会っていない。親からの長距離電話は百年の思いで待つ。姉は勤めて明るく気丈にみえるけど、春節前、一年振りに電話できた時には甘えた子どもに戻っていた。両親は今年も帰れなかったけど。
■生後まもなく親の出稼ぎで祖母に育てられた児童は、孤独と親への憎しみで強い人格が作られて、ようやく帰郷した母親に触られるのも異常に嫌う。母親はやりきれない。育った実家で当時、周囲にののしられたのは自分の姉妹に男の子が生まれなかったから、とも言っては泣く。義兄の家庭に男の子が生まれたのを、家の栄光を取り戻したとまで。
■家を新築するために両親が幼い弟を連れて出稼ぎに出ている児童は、預け先の「おばさんに気に入られるようにしてね」と言われて。土地の慣習とはいえ何のための家なんだろう。


放送前の仮題「お母さん お帰り!」と違ってるのは、春節にも帰ってこれなかった親を待つ子供たちへの配慮なのかもしれない。




地上波でのNスペ 激流中国シリーズ第一弾「富人と農民工でも、内モンゴルに住む一家が娘の進学の学費工面に父と兄が出稼ぎに行き、それでも足らずに兄嫁までが赤ん坊を実家に預けて、出稼ぎに出ていく事情が映されていた。一家の期待と将来を丸ごと託されてる娘さんのプレッシャーと罪悪感は計り知れない。
唐突に同じ地区の小学校での、幼い子供のクラスでの出稼ぎ両親へ宛てた作文を読むシーンが短く挟まれて、「貧乏」「勉強」「恩返し」と途中泣きじゃくる映像が映されてもいた。格差社会の対比として語られる成功した実業家たちの自慢話が幅をきかせて、こちらはCMくらい短過ぎたと思う。見る側のこらえ性がないのを考えて編集したかもと勘繰る。