前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

女給哀史(萌え抜き)

カフェー考現学 (大正・昭和の風俗批評と社会探訪―村嶋帰之著作選集)

カフェー考現学 (大正・昭和の風俗批評と社会探訪―村嶋帰之著作選集)

村嶋 歸之(むらしま よりゆき)著作選集①「カフェー考現学昭和4年〜6年までの著作から「カフエー考現学」「歓楽の王宮 カフヱー」「大阪カフエー弾圧史」を復刻集録したもの。 
大正ロマン引き摺る昭和初期の大阪の歓楽街レポートを読む。カフェーの歴史がこんな尖端でエロ100ぱーせんと(当時の流行語)とは知らなかった。風俗通や今の萌え喫茶体験者ならもっと楽しんで読めそうではある。真性カフェイン中毒の自分がこの時代にタイムスリップしたら、本物の濃い珈琲を出す店が見つけられずに悶絶しそう。


なんでもありの昭和初期を読み返し。川柳川柳の定番落語「ガーコン」から15年以上も遡って、歓楽街にはジャズが流れていた。著者は歓楽街の人の流れを詳細にカウントしたり、平均的な遊興費を試算したりと、イマドキのマーケティング本とレトロな探偵物の入り混じった社会考察を書き連ねている。芝居小屋からより客を呼べる映画館に転換したり、繁華街の映画館の入場料と客数や、大阪での万歳劇場と寄席との比較などは、今では貴重な資料。もともと「エロ」を欲した娘義太夫へ通った客層が、サービス過剰なカフェの出現でそこへ流れ、義太夫人気が落ちたという分析も面白い。芸者〜女給への客の乗り換え心理に、近代化の刺激欲求「テンポが早い・手軽・安値」と論じてもいる。カフェーは文壇カフェなど一握りのインテリの集う店を例外にして、今でいうバーやキャバレー(死後)の前身になるサービスを客に提供していた様子がうかがえる。社会背景の分析や、細かい統計と平行して語られている、女給さんの様々な災難物語はイマドキの女性週刊誌の記事風だったり、時にポエムのようで退くところも・・・。