前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

綿花地帯からの告発

録画分からBS世界のドキュメンタリー A Killer BargainLynx Media(デンマーク 2006年)
を視る。インドの綿花地帯と染色産業での労働者の慢性的な薬害と周辺地帯の汚染を、欧州で商品を買っている視聴者へ向けて告発する内容。デンマークの化学薬品企業「CHEMINOVA ケミノバ」を先進国では禁止になっている農薬を売っている事を重点的に批判している。企業側は取材拒否。
インド北西部のパンジャブ州にある広大な綿花地帯での農薬散布は深刻で、周辺の街にはガン専門病院が9箇所も増築されたとのこと。列車に乗って大挙して通院する状況や老若男女の痛々しい患者の姿も写している。


インドの指先で食事をする文化は楽しいのだけど、これが農薬中毒とガンの急増にも拍車がかかっている。防護服で農薬を撒くのは当然のように守られず、仮に手を洗ったところで、爪の奥深くに付いた農薬は取れないから、食べ物と一緒に身体に入るということ。雇用者は労働者が健康を害すれば当然使い捨てしている。


現地のケミノバ工場が稼動している街の風下にあるカーロッド村の汚染の実態を暴くこの姿勢も、真っ当ながら番組製作者の浴びるだろう業界の圧力を過度に心配してしまう。工場からのガスを慢性的に浴びている近隣住民が重度の皮膚炎や内臓疾患に苦しんでいる。1984年のボパール化学工場の大惨事は教訓になっていないし、放送分には言及もない。


デンマークの有名ショップに衣料品が卸されているラジャスターン州にある製造元の染色プリント工場取材では、多くの労働者が古い人海戦術で、素手で危険な薬品をかき混ぜたり、酸や塩素が入ったプールに素足で入って衣類を攪拌している。当然身体を壊すので若者しか居ない。

デンマークに戻って取引先の企業責任者への取材も2社成功している。企業イメージとして「環境に優しい」という歌い文句は万国共通で陳腐に思える実例を見た。


コストと人件費の高くなる自然原料で染色しているインドの工場の紹介もあり、告発だけではなく代替え品の選択肢を提案してもいる。


日本を含めた先進国の化学企業グループは、自国で禁止された毒性の強い農薬や・医薬品を国外で大量に売っている。この問題は80年代から市民団体や一部の学者・研究者から警告され続けてはいる。この番組放映後に欧州の消費者にどう変化があったのか知りたくなる。反グローバリズムというか途上国の劣悪な工場を批判する様々な運動は細々と続いてはいるけど、これは人の生死が架っている。大型量販店で格安の商品を買う行為の源流で、人がどんどん死んでいくイメージは大袈裟な妄想でもない。