前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

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ホパラタする

和人は舟を食う」1986年刊の「知里真志保」没後25年目の遺稿集。(2000年版もあり)
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意味深な本のタイトルは昭和22年12月札幌青磁社の「続随筆北海道」の文章から。バチラー牧師の編纂したアイヌ語辞典の誤りから、日本人が使うアイヌ語の知識の誤りを批判している。チェプは魚〜鮭の意味を持つ、それを和人はチプと言う。チプは舟の意味になるので、そこから「アイヌは鮭を食い 和人は舟を食う」と皮肉っている。アイヌの文化存続に理解と協力をした希少な人々へも、容赦ない態度を取っていた片鱗が、自身の文章からも匂う。


収録された民話「パナンベ ペナンベ」は、舌切り雀に似た良いい爺さんと悪い爺さんの噺。冒頭部分はアイヌ語ラジオ講座99年10月第二回に使われていた。著者についてもweb上で書かれている。


アイヌにとって川は山から海へ流れているものではなく、海から山の源流へ向かっているのだという世界観を、単語から説明している。鮭の遡上など「魚」の視点から創られているのかも。カムイも単に「神」の意味だけではなく、古語では「悪魔」としての意味づけがあったという。
「性に関するアイヌ語の話」での戦いとまじないの話も面白い。アイヌ語でのあの世の噺を集録したものが多く載っている。


巻末に言及されている生前に録音された叔母にあたる金成マツのユーカラ伝承は、検索したところ今現在も研究途上のままらしい。