前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

ボロバス旅の有段者

謝々!チャイニーズ

謝々!チャイニーズ

今年亡くなられた米原万里さんが書評で著者の全作品を絶賛していたので、初期作品から読んでみた。
90年代前半の華南地方での旅のコラム集。香港〜ベトナム国境を挟んだ南の沿岸部、台湾に面した島も。あとがきの番外編で出会いが「再見」では終わらない纏めも。
もう笑うしかない不条理と混乱、苦い共感の連続。行く先々で26歳当時の著者が「結婚してない」だけで騒ぐ華人の反応はシャレにならない。万引きした悪い子供に教え諭すような口調やら、この辺じゃ誰も結婚してる〜「結婚してないのは・・・人殺しだけだ」と言われたり。この家族観は海外出稼ぎの激しい地方ならではの「絆」は世界を縦横無尽に不法就労や送金やら。


著者の紀行文が好いと思える理由と、テレビでタレントを使った海外紀行を視たくない理由とはおんなじ。偶然乗ったバスや偶然降りた町で、知り合った現地のひとと必然で仲良くなって、自宅の食卓でモテナサレル。それは一見微笑ましいけど、厚顔な旅行者でなけりゃ耐えられない「家族関係」の誘発が待っている。そして旅行者自身が日本に居る家族との「姿勢」を矯正させられる辛さ。
自分も長期貧乏旅の途中で知り合ったひとに、「今から家族に電話しろ!」と怒られた事を思い出した。お宅の電話を使ったら国際電話料金が馬鹿高いと言っても聞いてくれなかった。アジアの優しさと鬱陶しさの根本は「家族思い」、家族を思わない=人の道を外れた途方もなく愚かな奴 なんだろうな。