前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

楽団を乗せてバスは行く

第七回東京フィルメックスイラン映画を今晩から視始める。チケットの買い方ではプチ・イラン映画祭。
レイトショーでバフマン・ゴバディ監督の「半月」 
上映前に来日している監督からの挨拶と短い説明あり。トロント国際映画祭でのモーツアルト生誕250周年記念部門で作られた作品と知る。ちなみに、通訳を通して制作上の話は、作品の8割がプロデューサーの要望を酌んだもので、撮影した10箇所の歌のシーンをカットしていること、など。


ストーリーはイラクフセイン政権崩壊後に、亡命クルド人の伝統音楽家達が、ボロバスで国境線を迷走しながら祖国クルディスタンでのコンサートへ向かうロードムービー。イラン・イラク・トルコ・西アゼルバイジャンと荒涼な山間の村や雪山の国境警備が映像に出てくる。劇中にクルド人クルディスタンへの説明はほとんど無い。児童労働だらけの楽器工房も印象に残る。バスの運転手役がその場しのぎの虚言を騙ったり、楽団の老リーダーの予知夢が何度も挿入されていたりと、虚実入り混じりと「映像美」。紛争地や国境線での銃声もあって、一行とクルディスタンの進路は危うい。国境で分断され続けているクルド人の伝統音楽が、ようやく復興するという記念碑的コンサートへ楽団は向かうが、映画の終わり方には、希望が見い出せなかった。


レイトショーでの劇場は7〜8割の入り。一般に国際映画際で紹介されるものには文藝・社会派寄りで娯楽性が少ない。これもイランで大衆が見たがる映画ではないだろうし、制作上先進国の一握りの観客向けな感じが残念。



終盤にバスの屋根にドスンと降りてくるヒロイン(半月)は美しかった。