前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

東京裁判

東京裁判 [DVD]

東京裁判 [DVD]

長編記録映画モノクロ83年制作をビデオ版で視終わる。全部で四時間強。
極東国際軍事裁判 昭和21年春の昭和天皇の誕生日から起訴開始、昭和23年末の明仁親王(今の天皇)の誕生日の刑執行まで。アメリカ公文書の公判中の記録フィルムを中心に、裁かれた15年分の戦争と同じ時間軸で撮られた各国の記録映画を挟みながら、解りやすく構成されている。

本などではお馴染み?戦犯も、動いて肉声が聞けたりすると、それだけで感心したり新鮮。

東条英機の仕草とか、震えたり泣いたりする挙動不審な大川周明とか。有名なエピソード、大川が前席の東条の頭を叩くところが映っていた。(軽く手のひらでたたく、開場がざわめく、東条が振り返って軽く笑み。)暫くしてMPに連行され退場する。大川周明は梅毒で精神障害と鑑定され法廷から外された。石原莞爾は地元で死の直前、出張法廷の映像が視れた、音声などは無し。
別映像で国際連盟を脱退する直前の外務大臣松岡洋右の英語スピーチは、舌足らずな発音で貴族階級の真似なのか気になった。
シベリアから連行され証言台に立った(座った)元満州皇帝・溥儀の北京語応答もあり。当たり前ながら弟さんの溥傑氏と似ている。



ウエップ裁判長は天皇の戦争責任追求にこだわり、キーナン主席判事はアメリカ政府の意向で「天皇免責」を被告達へ誘導してる不思議な図式。東条英機が連行前に拳銃自殺未遂した直後、体から半分も失われたというB型の血液を提供した人々のなかに、ニューギニアで日本軍の捕虜になった米兵が映っていた。このまま死なせはしない。裁きを受けろ、といった心情がナレーションで伝えられた。一命を取り留めた東条は「天皇無罪」を勝ち取る為に国際法廷に生きたのだろう。伝わらない日本語通訳に苛立っても居る。「対案」を「反対」と誤訳するような致命的なミスも字幕付きで説明される。


ラストでは各戦犯が個々に呼び出され判決を下される映像まで。ドイツのニュルンベルグ裁判での絞首刑映像などを挟んでいる。


驚いたのは、戦犯側についてしっかり仕事をこなすアメリカ人被告弁護団。形式上の弁護団ではなかった。もっとも裁判長が話の腰を折るし、記録から重要な話を削除させたりするけど。
ハルノートで日本を日米開戦へ誘導し、暗号解読で奇襲も知っていた「事実」は、アメリカ人弁護団のブレイクニーによって法廷で明らかにされた。ソ連側からの日露戦争に遡る過剰な追求には、ヤルタ会議でのソ連の領土獲り密談(当時は非公開)も法廷で暴露している。
裁判開始から早々に、東京裁判で主題の共同謀議「平和に対する罪・人道に対する罪」が裁けるならば、原爆を落とした飛行士も作戦担当者も、容認した国家指導者も裁けるはずだとブレイクニーは主張している。これを黙殺した当時の連中はなんだったのか。




挿入された同時代のニュース映像に「インドシナで蜂起したベトミン軍鎮圧に苦しむフランス軍」という字幕があって、なんだそりゃ?でした。この倒錯した文は今のイラク報道でも診られるけど。


国際法廷で、戦争における平和・人道への罪を裁く事の不条理は、世紀を超えて独裁者の居る国を爆撃する「正義」と「テロとの戦い」便乗と重なって気が滅入る。
インド代表パール判事の異議「日本無罪論」は今もなかよし日本人グループの誤読と脚色が多い感じ。どうせならインド映画で「東京裁判」を希望す。戦犯も踊るよ。