前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

白毛女と愉快な仲間たち

満映の設立から終戦後の関係者の流れまで詳しく調べている書籍を読む。

幻のキネマ満映 甘粕正彦と活動屋群像 (平凡社ライブラリー)

幻のキネマ満映 甘粕正彦と活動屋群像 (平凡社ライブラリー)

先日再放送されたETV特集選「中国映画を支えた日本人 "満映"映画人 秘められた戦後〜」
満映時代から東北電影公司の創設に夫婦で尽力した映画編集の岸富美子さんを中心に旧満州への旅を記録する内容だった。かの有名な「白毛女」1950年の編集をされていたのも驚き。インド映画もビックリの不思議なミュージカル映画(悪徳地主にレイプされた村娘が山に篭って村人と共に復讐する話、なのに歌うよ)のダイジェストがTV字幕付きで観れたのも嬉しかった。貴重な証言と映像も多い。でも【日本の映画人と技術が今の中国映画の礎になった】という撮り方は、多分に日中友好史を伝える寄り方も。
本で書かれている「満映」作品の実力と満州での人気の問題は、満映本社に「上海映画」が入ってくると試写室は中国人で満員になり喜ばれたというエピソードが、より実質に近いと思う。


ソ連参戦でいきなり敗戦、国民党と八路軍の奪い合いになった満洲映画社。番組では早くから共産党の宣伝機関として八路軍のエージェントが人身掌握したとされた。本書によると、翌年四月のソ連軍撤退までは、組織の権力が国民党と共産党に揺れて日本人同士での密告も横行したと書かれている。元々、自殺した甘粕理事長が日本国内に居づらい思想犯を右・左の区別なく満映に入社させていた事もある。満州在住の回民達へのメッカ巡礼へ毎年「満映」資金から援助していた話も、機関絡みなのか甘粕の真意は読めない。日本国内で上映禁止になったディズニーアニメ「ファンタジア」を湖西会館で観てたり・・・そんなんばっかり。


カメラマン気賀靖吾の話は不思議としか言い様がない。映画カメラマンと鍼灸師の活躍で戦後間もない中国での本場鍼灸復活に教え治し協力したという。番組で映像の一片が視れた蒋介石批判の人形劇「皇帝夢」のカメラマンを途中降ろされている。東北電影公司で後身を育てて日本へ帰国した元「満映社員」達は、折からの反共ムードに就職先が困難だったと番組で語られた。本書では「東映」の設立当初は満映に居たマキノ光雄を中心に『満州から引き揚げて来る映画人を救済し、職を与える事を社是として発足』したと書かれている。


白毛女」の悪徳地主役の俳優が、「鬼が来た!」に出てくる老人、あの元清朝の首切り役人と同じだった事に驚く。う〜