前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

話芸「国家の呪縛」

国家の自縛

国家の自縛

大仰なタイトルでも、内容は非常に面白くて一気に読んだ。 
一連の外務省ムネオ疑惑で逮捕512日拘留され、判決後の今も控訴中の「佐藤優」氏が、産経新聞元モスクワ支局長を務めた旧知の記者からのインタビューに答える形式。雑誌掲載から書籍化したという。質問側の文は短いけど、対話形式なので「ずば抜けて頭のいいひと」という巷の評判がナルホドという感じ。余談のような学生時代の話までも娯楽色強い。話をするということは、説得力・ゲームを楽しむ・サービス精神なのか


対話から発せられるアドリブ、膨大な文献からの引用、巧みなロジック、コミカルな置き換えも多い。普通の相手ならこの説得力に圧倒されるか、よくある知識人へのアレルギーのどちらかになるかと思う。自分は比喩と、伏線を絡めて誘導する類の「話術」自体が大好きなので、話の内容うんぬんよりも、凄い「芸人」の高座が聴けた様な得した気分になる。


今も関心の強い日本の北朝鮮外交への具体的提言は、首脳トップ同士の意思疎通が途中で曲がらないように、直通する人間電話をピョンヤンへ置いておく、とか。
拘置所で読破したという【金日成著作集 全44巻】のこの箇所を引用して、北との交渉席上で〜〜使え。とか。日本で語られるネオコン論は幼稚で本質がズレている、本質の解説に「カバラの知恵」神の収縮という神学まで持ち出して、トロツキズムもが混濁していると語るところ・・・等々、面白トーク満載。


日本外交はイスラエル・ラインを強化すべし、という持論が何度も出るのはとても違和感があった。それは自著「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」を読んで納得。職務でのロシア情勢のスバヤイ情報収集にロシア系イスラエル人の人脈を重宝していた、実体験からのようだ。
フジサンケイグループの出版・報道関連で感じるのは、親イスラエル色という個人的解釈もこの際付け加えておく。


特に自分が同意できなかったのはチェチェン情勢への姿勢。チェチェン問題を長年追っていたジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤが数日前何者かに射殺された、その分も増幅されて。


【P93〜94】に語られている、「チェチェンマフィアが北方領土樺太に浸透し、カニなどを大量に密猟しては根室の花咲港へ水揚げし、巨額のブラックマネーをテロ活動として地元へ流している〜」
テロとの戦い北方領土返還に間接して繋げる噺として読んでも、自分はコレは今時点で信憑性を疑う。


【P119】プーチン親日感は柔道よりもこちらだとして語られる、1999〜2000年で国際社会がチェチェンへのロシア政府の対応は人権問題がある、と非難された時に日本政府だけが「チェチェンはロシアの国内問題」として理解を示した。これにプーチンは感謝していて、それが「対露交渉上の大きな財産」になっている。という見解。


人権蹂躙無視は日本のお家芸、日本の貴族趣味外交、とか不毛な罵詈雑言が頭をよぎる〜。