ゲーテッドシティへ
- 作者: 久保大
- 出版社/メーカー: 公人社
- 発売日: 2006/06
- メディア: 単行本
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元東京都治安対策担当の職員だった方が様々な思いで執筆した、メディアリテラシー本とも言える。
巷に蔓延する「近頃は治安が悪くなった」言説を、数多くの公文書・統計とアンケート、報道からその内容を精査している。タイトルはコレでも結論はあえて断言を避けている。「防犯」を「治安」へと説明無しにすり替える警察行政と9・11以降のテロ拡大解釈。安全産業の景気の好さなど、読み進めるうちに日頃漠然と感じていた地域社会での疑問が幾つも解けていく。トヨタ発のジャストインタイム制と外国人労働者の企業側の利用方法の酷似など、日本人の契約・パートなど周縁労働者まで話を繋げてもいる。
外国人による犯罪について、報道が日本人の起こした犯罪よりも詳細に報じられ(5倍とも)、増加の一途と言われる犯罪件数の中の多くに不法滞在までが含まれている事を知る。
この本で強く認識した事は、統計に出ている犯罪件数の増加は安易な警察への通報が増加している事と関連が深いということ。人間関係のもつれや、突然のトラブルでもケータイから気軽に警官を呼ぶ「常連」の存在があると思う。聞いた限りで外国人の不法滞在は、当事者の責任というよりも入管のシステムと対応の不手際(必要な書類を教えてくれない・外国語能力の欠如・等々)が原因として多い。誘導尋問なアンケート調査や統計の極端な部分だけ比較して「凶悪化する若者犯罪」などと報じられ続けるが、戦後の統計を並べて視ると一番凶悪なのは古きよき時代の若者、今老人の世代になる。今現在も老人の犯罪もよく起きているのに、「キレる老人」とは報じられない。
東京オリンピック誘致運動がどこまで本気なのか不明だけど、観光誘致・労働力輸入と不良外人排除の都合のよい東京都の政策は計画的な犯行なのか。